内容説明
陳独秀は文字通り反骨の人である。反清革命の志士として活動を開始し、日本留学を経て『新青年』を創刊、五四期の「総司令」となって思想・文化を先導した。ついで中国共産党を創建するも、蒋介石に敗北を喫するや総書記を退き、トロツキー派に転じて中共と対立した。そのため新中国では否定的人物とされてきたが、『新青年』から百年、今、陳独秀の名誉回復が進む。本書では魯迅、胡適らの盟友にして毛沢東の師たる文人・革命家、陳独秀のありのままの姿に迫りたい。
目次
陳独秀とは誰か
1 辛亥革命期までの陳独秀
2 新文化運動期の陳独秀
3 中共の建党とその指導者時代
4 中国トロツキー派指導者時代と晩年
著者等紹介
長堀祐造[ナガホリユウゾウ]
1955年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程中退。博士(文学)。専攻、中国近現代文学。現在、慶應義塾大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとうしん
11
『新青年』と北京大学時代、五四運動、中国共産党建党、トロツキー派への転向、晩年、そしてその時々の交友関係、近年の再評価と、知りたいポイントはあらかた押さえられている。また新文化運動についての簡潔なまとめともなっている。2021/05/14
ジュンジュン
6
新文化運動や五四運動で中心的役割を果たし、中国共産党創立の中心メンバーにも関わらず、不当に評価を貶められた存在、陳独秀。近代中国史におけるその位置づけを正すのが、本書のねらい。小冊子ながら、狙いは成功していると思う。2020/06/06
瓜月(武部伸一)
4
中国共産党創立者は毛沢東ではない。近代中国の思想的・政治的起点である新文化運動・五四運動を領導した陳独秀その人だ。20世紀初頭激動の中国、陳独秀は反帝国主義と反日本軍国主義の青年運動を牽引する中でマルクス主義に接近、ついに中国共産党を創立するに至る。さらに1920年代中国革命運動の苦闘の中、スターリンからの指導に反対し中国トロツキー派の指導者となる。最後まで徹底した民主主義者であった陳独秀の生涯を辿るブックレット。毛沢東ではない中国の可能性。トロツキー研究所閉鎖時に蔵書から頂いた中の一冊。5年の積読終了。2024/09/10
佐藤丈宗
4
中国共産党を作った男の評伝。彼の生涯を見てみると、中共黎明期の功績は認められないのに、失策の責任だけを押し付けられている感じがある。彼の政治的力量がその程度だったといわれてしまえばそれまでだが、現在まで続いている中国共産党を語るには、建党者たる陳独秀の再検討の必要性を感じさせられる。本書がユニークなのは言語学者としての陳独秀にスポットを当てようとしていることだ。この視点からみると文学をもって近代中国をリードした魯迅との関わりも非常にわかりやすくなる。2017/11/03
sakesage
2
陳独秀は、五四運動の指導者であり中国共産党創設者であるばか、中国近代文学(口語体)による大衆化をはかり魯迅を正当に評価した歴史的人物である事が本書を読んで知った。毛沢東も、1945年当時「五四運動時期の総司令」にして「功労があった」と独秀を評価した。しかしながら、五四運動運動からの中国革命の敗北の責任を、ソ連とコミンテルンにではなく独秀ら指導部(トロツキー派)に科し追放したことにあった。陳独秀は、日本軍に協力したと中国共産党史では触れられていたが、近年の研究により名誉回復されつつある。2025/01/03