内容説明
近代中国に生きた人物のなかでもっとも評判の悪い人物は袁世凱といっても過言ではなかろう。同時代の中国人や日本人、さらに後世の研究者も手厳しい言葉で彼を語っている。しかし、本当にそういって良いのだろうか。本書では、清末民国初期の大きな流れのなかに袁世凱を位置づけ、彼の歴史的存在に迫ってみたい。
目次
評判の悪い袁世凱
1 清朝と袁世凱
2 清末の新政
3 革命のなかで
4 中華民国大総統
5 世界大戦の渦のなかで
著者等紹介
田中比呂志[タナカヒロシ]
1961年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。専攻、中国近代史。現在、東京学芸大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ピオリーヌ
10
日本でも中国でも評判は芳しくない袁世凱の評伝。その要因は革命勢力を善とする視点が強いのではと私は考える。目の前の難局を臨機応変に切り抜ける有能な実務家という印象を強く持った。他よく袁世凱を指す際に使われる「ストロング・マン」の表記が登場しなかったのは意外の感。2020/10/01
日・月
7
よく聞き知っているのだが、あえてよく知ろうとして来なかった人物。専門家による評価に影響されてしまっていたのだろう。尾崎行雄の「桂太郎に似て」は自分の感覚に近いが、犬養毅は「経世の眼あり」と高評価… 確かに教育改革や治安維持に功績を残した。取引で民国の大総統になったのは後世の不興をかったが、大総統が孫文なら上手くいったともいえない。国境線の維持や分権状態は避けられない問題だった。「二十一か条」は実は発表前から既に英米の監視下で、袁の帝政支持・不支持も列強に翻弄されたようである。最後はついていなかったのだ。2023/10/31
ジュンジュン
4
「国を盗んだ大泥棒」、これが昔習った袁世凱のあだ名だった。本書で名誉回復を目指すが…「改革を志向する人々の中で、もっとも保守的な人」(87p)、この辺が限界だろう。今後もマイナスイメージが覆ることはないと思う。 2020/06/06
電羊齋
4
同じく今年出版された岡本隆司『袁世凱』(岩波新書)とは異なり、日清戦争以後の袁世凱にほとんどの紙幅を割いている。特に義和団後の「北洋新政」での多岐にわたる改革政策、辛亥革命後に行った中央集権政策を重点的に紹介。まさに本書副題にある「統合と改革」を中心とした内容。2015/10/19
sovereigncountr
1
本書は、善悪二元論的な安直な評価を超えて政治家袁世凱を再評価せんと試みた意欲的な評伝である。近代化改革の担い手として側面に光を当てた点は興味深い。岡本『袁世凱』と合わせて読みたい。2025/05/11