内容説明
アヘン戦争に官僚の立場で正面から向き合った林則徐と、数々の政治・経済改革を進言し、『海国図志』により外国を紹介した魏源。二人に共通した思想は、民政の安定をはかり、国家を富強にすることであった。彼らの考えは幕末日本の志士たちにも影響を与え、維新運動を推進した。私利私欲におぼれる官吏も少なくない清末中国で、政治思想を貫こうとした二人の生涯を追う。
目次
アヘン戦争期の開明官僚と思想家
1 林則徐・魏源の生きた時代
2 清朝の経世官僚、林則徐
3 経世の思想家、魏源
4 林則徐・魏源が後世に与えた影響
著者等紹介
大谷敏夫[オオタニトシオ]
1932年生まれ。京都大学大学院文学研究科東洋史学博士課程単位取得退学。専攻、清代政治思想史。鹿児島大学名誉教授、京都大学文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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singoito2
8
アリギきっかけ。杉原の勤勉革命論など根拠のない偽説だと良く分ったけれど、本書の意義はそんなことではない。国と民を守るために官吏の腐敗や市場独占と戦い続け、アヘン戦争に至らざるを得なかった二人の歩みが本書のテーマ。2015年の本だけれど、中国では二人ついて肯定的な評価がなされているようなのですが、そういう環境下で米国が強い軍事的圧力をかけ続ければ、中国は林則徐がそうしたように、軍事力で対抗することを止むなしと考えるに違いない。その中で日本はいつまでも米国に盲従し続けるべきか。色々と考えさせられる本でした。2023/10/24
電羊齋
2
魏源と林則徐の思想を清末の経世思想家の系譜上に位置づけ、さらに地方行政官としての面を丁寧に紹介。二人の思想が単に机上の学問ではなく、行政のプロとしての経験に裏打ちされていたことがわかる。特に二人の地方行政官としての手腕については知らなかったことが多く、参考になった。2016/04/07
錢知溫 qiánzhīwēn
0
第一章は、林・魏の二人が生きた嘉慶・道光期の各國の情勢、貿易の展開、中國國內社會の內亂や官僚の腐敗など、社會背景について略述する。 第二章は林公の生涯について、世上言われるようなアヘン戰爭の英雄としてではなく、水利事業や屯田など地方行政の名人としての側面に重きをおいて敘べる。 第三章は魏公の生涯について。嘉慶・道光期學術界の名家たちが登場し豪華である。 2022/11/15
光太郎
0
オモロ2022/05/22