内容説明
靖難の役を制した永楽帝は政治と軍事の両面から王朝の組織改編を断行し、その全権を掌握することに成功した。その力の源泉は戦役を通じて育て上げた自前の軍隊にあった。帝位簒奪を正当化するため、父帝朱元璋の忠実な後継者でなければならない一方で、その思いは恭順と反逆を問い続け、しだいに王朝の仕組みを独自の仕様に作り替えていったのである。これこそ第二の創業者たる所以である。
目次
二つの廟号をもつ皇帝
1 燕王登場と洪武政権
2 燕王擡頭と建文政権
3 叔父と甥の「靖難の役」
4 順逆の内政
5 順逆の対外関係・永楽政権後
著者等紹介
荷見守義[ハスミモリヨシ]
1966年生まれ。中央大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、博士(史学)。専攻、中国明代史。現在、弘前大学人文社会科学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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OKKO (o▽n)v 終活中
14
【修論提出記念読了登録祭り】 「明ってそもそもなんじゃらほい~?」「永楽帝ってなんか有名じゃん?」って感じの時期にむやみに買って、パパパッと概要を確認したのちは数年間放置……落ち着いてお茶でもしながらちゃんと読む所存2019/01/18
電羊齋
7
永楽帝のコンパクトな伝記。永楽帝の生母が実は馬皇后ではなかったこと、靖難の役が中国南北の争いというよりも国軍を二分する争いであったこと、永楽帝の「インナーサークル型政権」の様相、「順逆の理」による対外関係など、档案史料と近年の研究による新たな知見が盛り込まれており、興味深く読めた。2018/12/25
ジュンジュン
4
明朝は初代朱元璋が創始し永楽帝が完成させたのか、朱元璋が創ったものを永楽帝が造り直したのか、最新研究では後者らしい。華々しい外征が有名だが、本書の特徴としては政権内の人的構成要素を詳らかにした点だろうか。2020/04/23
ふら〜
2
手軽に読める本シリーズ。どのようにして皇帝まで上り詰めたかの過程と、統治の特色が簡潔にまとまっている。靖難の役は叔父と甥の私闘、国を二分というのは不正確で国軍を二分して闘ったというのは興味深い。メンタリティは確かに第二の創業者と言ったところ。しかし権力を握ったあとは本当に良く人が死ぬな。前代の功臣を桁違いに殺しても(まあ血族含んでだが)、代わりの人材が普通に湧いて出てくるのはほんと不思議。地位が人を育てるのか何なのか。2018/01/07
佐藤丈宗
2
明王朝第二の建国者という評価は「成祖」という廟号からもわかる。永楽帝の諸政策には「靖難の役」をはじめとする、即位の状況に大きな影響を受けており、本書でもその記述に紙幅を割いている。太祖・朱元璋との比較や永楽帝以後の政策転換を見ることで、彼の個性と、順逆の論理に基づく治世の特色を簡潔にまとめあげている。2017/03/16