内容説明
李成桂は、東アジア世界の激動期にあたる14世紀後半に頭角をあらわし、不遇な立場にあった文臣の協力を得て高麗から朝鮮への王朝交替を成し遂げた。開城から漢陽に都を遷し、いまのソウルの基盤を築きあげたが、王位継承をめぐる王子たちの争いに心を痛め、わずか7年で王位を退くことになる。本書では、東アジアのなかの朝鮮半島という視点から、李成桂の生涯と当時の政治状況を史料に即してたどっていきたい。
目次
東アジアのなかの武人李成桂
1 李成桂の系譜
2 高麗末期の国際環境
3 朝鮮王朝の開創
4 失意の晩年
著者等紹介
桑野栄治[クワノエイジ]
1964年生まれ。九州大学大学院文学研究科博士課程中途退学。専攻、朝鮮中世・近世史。現在、久留米大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
16
李成桂のコンパクトな評伝。そもそも出自が元朝との繋がりも深い一族にあり、配下の腹心には女真族の人物がいるなど、元末明初の混乱期に頭角を現した人物らしいバックグラウンドがまず面白い。武勲で名を上げ、末期の高麗王朝で4人も王の首を挿げ替えて簒奪するという振る舞いは、なんというか梟雄に近いような印象。明の洪武帝からも警戒されていたというのも納得である。故に晩年の腹違いの王子たちの不仲、後継者との対立は、その生涯の陰影を表しているよう。東アジアの動乱期の中で、のし上がってきた人物であることがよくわかる。2023/03/02
電羊齋
4
高麗末期の李成桂とその一族の勢力拡大の背景に、元明交代期の激動の国際環境があったことがうまくまとめられている。自分は女真(満洲)人の歴史を専攻していたので、李成桂一族と女真人との結びつきが興味深かった。また、高麗末期の権力掌握の経緯から、明の洪武帝が李成桂に対し非常な不信感を抱いていたというのも印象的だった。晩年の王子たちの王位継承争いは悲惨の一言。そりゃ嫌になって仏門に入りたくもなるわなあ。2016/01/22