内容説明
ハンムラビは今から3400年以上も前に、43年もの間バビロンの王として君臨した。治世晩年に編纂させたハンムラビ法典の「あとがき」によると、彼は後世の人々に、戦いに勝利した王、人々に安寧と豊饒をもたらした王、そしてなによりも社会的にもっとも弱い立場にあった孤児や寡婦を守る「正しい王」として認められたいと願っていた。本書では、ハンムラビが本当にそのような王であったのかどうか、当時の史料に基づいて検証する。
目次
ハンムラビの願い
1 ウル第三王朝の滅亡とアムル人諸王国の出現
2 ハンムラビによるバビロニア統一
3 豊饒の維持者としてのハンムラビ
4 正義の維持者としてのハンムラビ
著者等紹介
中田一郎[ナカタイチロウ]
1937年生まれ。早稲田大学文科系大学院修士課程(西洋史学専攻)中退。ヒブルー・ユニオン・カレッジ大学院を経てコロンビア大学大学院博士課程修了(ph.D.取得)。専攻、古代メソポタミア史。現在、中央大学名誉教授・古代オリエント博物館館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュンジュン
5
「目には目を、歯には歯を」の法典で有名なハンムラビ。長らく忘れられた存在だったのが法典碑の発見(1901年)で一躍有名に。それだけにほとんど事績を跡づけられないと思っていたけど、なんと!王碑文が20点、ハンムラビ自身の手紙200通、同時代の外交文書多数(マリ文書)と「ハンムラビは量の点でも多様性の点でも、史料に恵まれている」(24p)。3800年もの昔を生きた王の生涯を復元するのに、本人の手紙や同時代史料で跡付けできるとは…恐るべし、粘土板の耐久性!2019/12/15
カラス
3
本書の約三分の二を占める、ウル第三王朝の滅亡からハンムラビがメソポタミアを統一するまでの乱世の記述が地味に面白く、きちんと地図もついているのでなじみのない地名ばかりでも何とかついていけた。勢力均衡によるつかの間の平和から、大国の遠征と一国家の滅亡によって一気にパワーバランスが崩れ勢力図が塗り変わるさまは、読んでいて面白かった。しかし、ハンムラビ王の人物像が伝わってくるような内容ではなく、そこが不満。伝記というより古バビロニア時代をハンムラビに重点を置きつつ概観した本という感じだ。2019/05/01
トリタニ
0
ウル第三王朝滅亡後からハンムラビ王の時代に至るまでのメソポタミアの地の歴史的概観+王と法典。前者のほうが長く、ハンムラビ王についてはあまり知ることができない。2015/10/11
ソルト佐藤
0
このシリーズ、コンパクトな伝記的なものを求めていたけれど、少し違う路線なのか? 古代過ぎるためかもしれないけれど。それでも、当時のハンムラビの手紙(外交文書であるとはいえ)が残っているとは、びっくり。これが粘土板のすごさか(笑 実のところ、ハンムラビの人となりはあまりわからなかった。けれど、法典にもあるとおり、地位を極めた後は、すべての 人にとって公正で豊かな世界を作りたいと思う心。偽善的であれ、名声欲であるかもしれないけれど、それでも、自らしか見ない王達とは違う所を見た気もする。2014/03/26
こうきち
0
古代の勉強に良かった2020/05/22