内容説明
厄介なしがらみからは自由でありたい、しかし、人との結びつき=共同性なしで生きるのはやはり難しい。十九世紀末のイギリス、都市に暮らす労働者たちは、生きるために不可欠な共同性をなによりもアソシエイションに求めた。多種多様なアソシエイションで遊び、学び、助けあい、時には戦うことをつうじて、匿名的にして流動的な都市のなかで彼らの居場所が見出されていった。近代都市で開花し、近代都市を支えた「アソシエイション文化」の歴史的経験は、私たちにどんなヒントを与えてくれるのだろうか。
目次
労働者クラブから都市をみる
1 余暇の文化
2 労働者のクラブ・ライフ
3 労働者クラブと都市の政治
4 都市生活における「アソシエイション文化」
5 「アソシエイション文化」から考える
著者等紹介
小関隆[コセキタカシ]
1960年生まれ。一橋大学社会学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専攻、イギリス・アイルランド近現代史。現在、京都大学人文科学研究所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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つじー
1
「サッカークラブの『クラブ』って何だろう」って気持ちから読んでみた。感想はnoteに。 https://note.com/nega9clecle/n/ncc8e3225103a2023/11/29
ゆたか
1
労働者のクラブは当初、「合理的レクリエイション」を根付かせるために資本家によって作られたものであった。そこでは飲酒が禁じられ(こういう習慣こそ労働者を堕落させると信じられていたのだ)、教養を身につけさせるような活動が行われていた。次第に活動内容は改められ、労働者自身がクラブの運営に関わるようになっていく。最後の方で触れられている公共圏について詳しく知りたかったけれど、この話題についての記述はほとんどなかったのが残念。2014/04/14
ワタシ空想生命体
0
クラブといえばジョッキークラブや架空のものだけどディオゲネスクラブのように有閑階級の所有物だとおもっていた。フットボール・クラブや労働組合もクラブの一種なわけですね。2013/08/12
日暮里の首領様
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19世紀英国。新しく形成された巨大な労働者階級を、娯楽を武器とした会員制クラブが惹きつけた。しかしクラブは単なる娯楽装置ではなく、労働者が社会団体の運営に携わり、時には教養に触れ、政治に関与する場となっていく。多元的な中間団体を通じた、市民的な自由の実現…こうした西欧的多元主義の根柢には、クラブ文化があるのかも。2012/12/12
ハンギ
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19世紀のイギリスに焦点を当てて、アソシエーション文化というクラブ(主に男性労働者からなる娯楽と政治を論じるための組織)について解説したもの。最近は新自由主義が強いが、その模範とされるビクトリア時代においても相互扶助、集団的自立を規範にした、アソシエーション文化が盛んだったそうです。人と人との結びつきはけっこう強い力ですし、現代日本も女性や外国人に開放されたメンバーシップの団体があればいいなあと思いました。叙述がやや散漫なので、年表か、もうちょっとしっかりした記述をして欲しかった。2012/06/25