内容説明
十七世紀中葉にブリテン諸島で起きた事件は、「革命」なのか、「内戦」なのか?かつて「イギリス革命」と呼ばれて疑われなかった名称が、最近はさまざまな立場から見直されている。本書は「ピューリタン革命」を、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズという四国の相互関係から再検討し、イングランドを中心とした複合国家が形成される重要な転機としてとらえなおす試みである。
目次
「ピューリタン革命」でいいのか?
1 宗教改革と複合国家体制の成立
2 初期ステュアート期の複合国家体制の危機
3 ピューリタン革命の開始と宗教問題
4 クロムウェルと複合国家体制の形成
5 名誉革命と複合国家体制の確立
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
14
ピューリタン革命もといブリテン革命ってやっぱ複雑だわと思う。イングランド、スコットランド、アイルランドの三王国の利害やプロテスタント内の対立など、切り口がいろいろあって、一読ではすっきり理解とはいかない、ただスチュアート朝期にイングランドとスコットランドの王冠が一人の人物に集約されたことによる王権の強大化から、それまでの複合国家体制がワヤになったことで、その再調整のために多くの血が流されたということは間違いない。見かけは同じ複合国家だが、革命の前後ではその中身が大きく変質したのだ。2025/03/12
組織液
10
再読だったかなこれ。今までの研究や革命としての視点の問題点を踏まえつつ、スコットランドやアイルランド、ウェールズも含め改めて「革命」の意義を考察している本です。共和政期の複合国家体制が、テューダー朝期や前期ステュアート朝期の複合国家とは全然違うものであったことや、スコットランドやアイルランドが決してイングランドにとっての辺境や植民地などではなく、大きな影響を与えていたことが分かります。人物のリブレットのクロムウェルまだ読んでないんでそっちもみてみますかね…2021/08/03
たかみりん
5
従来のイギリス革命を「革命」とみなすかどうかについては様々な議論があるが、本書ではそれらの論を踏まえつつ、ブリテン島全体を視野に入れた政治情勢を概観し、改めて「革命」としての意義を考察する。本書によると17世紀半ばに起きたこの事件には3つの側面があるという。①チャールズ1世による国教会強制に端を発する「三王国戦争」。②宗教問題からピューリタン諸派が勢力を伸張するまでの「ピューリタン革命」。③現在に至る複合国家体制の基礎を造った「ブリテン革命」。特に②③こそがその後の社会経済発展のポイントとなったと見る。2013/06/06
ジャケット君
3
複雑怪奇でよくわからなかった。色んな派閥が濫立し宗教が絡み合い、そして複合国家らしくイングランドのほかにスコットランドアイルランドウェールズなど一国史を超える狭めのグローバルヒストリーがあり国王も似た名前だし海外から高貴な血統を輸入したり・・あれ?世界のどこを見回してもこれほどの複雑な革命ってないんじゃないの?って思ったまである。フランス革命と比較してブルジョワを担い手として近代思想を原動力とするに対し国教会と国王の専制的支配を敵としてピューリタンと議会に結集した人々が立ち上がった。むずい。2023/10/28
バルジ
2
ピューリタン革命をイングランド一国ではなくスコットランド・ウェールズ・アイルランドとの相互関係に軸足を置き「複合国家」としてのブリテンを描く。面白いのはイングランド以外の、これまで従属的な立場に置かれていた他の3国がかなり能動的に動きピューリタン革命に大きな影響を与えていた点であった。特に自国の宗教体制(長老派支配)をイングランドへ移植し合同を期する動きがあったこと、カトリックでありイングランドへ抵抗の構えを見せるアイルランドと事態は多面的に抵抗する。一国だけでは捉えられない「複合国家」形成の展開は面白い2021/01/23