出版社内容情報
オスマン朝期のアラブ社会の都市の構造、宗教者の社会的地位、法廷と社会、農村や遊牧民の生活からイスラームの多元共存を見る
長谷部史彦[ハセベフミヒコ]
慶應義塾大学教授
内容説明
オスマン帝国が治めたアラブ地域は、西アジアと北アフリカの広域にわたる。十六~十八世紀、そこにはどのような社会があり、帝国はいかなる支配を試みたのだろうか。政治の変転、都市空間とワクフ、移動・交流する宗教者たち、法廷の役割、多元共存と異議申立て、ベドウィンと農民の動き。近世アラブ社会の複雑な史的現実に、多方向から光をあてる。
目次
アラブ地域の「近世」
1 近世アラブ史の展開
2 近世アラブ都市とワクフ
3 近世アラブの社会と政治文化
4 近世アラブの社会と経済
著者等紹介
長谷部史彦[ハセベフミヒコ]
1962年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻、中世・近世アラブ史。現在、慶應義塾大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Toska
9
一般に「オスマン遺領」と意識されることの少ないアラブ世界(メソポタミア〜北アフリカ)にスポットを当てる。土着・外来を問わず諸勢力が入り乱れ、各地で王朝化しながらも、全体としては帝国の枠組みが保たれ続ける摩訶不思議な世界。18〜19世紀のイラクとエジプトでグルジア出身のマムルーク集団が幅を利かせていた事実には驚いた。エジプトの支配者ムラード・ベイが実はトビリシ近郊の農家の倅だったなんて、言われなきゃ分かんないよなあ。つくづく「国境線」の移ろいやすさを思い知らされる。2023/01/04
ともブン
3
東洋史のレポート作成のために入手した参考文献。近代アラブ諸国がどれほど深くイスラム教と結びつきながら発展したか、歴史や社会構成などの観点から紹介している。 阿刀田高さんの「コーランを知っていますか」を以前読んでいたので、より理解を深めることができた。興味深く読んだのは、喜捨の考えが深いこと。貧弱や障害者に対して、より神に近い存在として手厚く保護している。商業の発展も喜捨のため、そして自らの徳を積むこととしていて、長年機能していることに驚いた。戦闘的な一面のみが知られているが、大きな偏見だったかもと自省。2021/05/23
MUNEKAZ
3
エジプトやシリア、イラクを中心にオスマン帝国下のアラブ社会をまとめた一冊。オスマン期の都市や地方というと、帝都イスタンブルやルメリ側の話が多いだけになかなか新鮮。地方軍閥が台頭しても許容する緩い中央支配や、ワクフを活用した社会福祉の実践など興味深い部分が多い。ただリブレットという形態上仕方ないかもしれないが、障碍者の扱いやベドウィンの存在などもう少し詳しく知りたいと思える部分も多かった。2017/06/30
たね
2
オスマン帝国の「辺境」となるアラブ地域の入門書。オスマン帝国の制度が流動的に取り入れられつつ現地の慣習と融合されて運用されていたことが分かったが結構難しかった。少なくともオスマン帝国最盛期には中心に反目しながらも緩やかにつながっていたことはなんとなく分かった。2025/05/10
Go Extreme
1
歴史的背景: オスマン帝国 イスラーム法 エジプト シリア 社会変化 経済変化 地域の多様性: 文化的・言語的多様性 ヌピア マグリブ マシュリク 地域特性 経済の変遷: 商品作物 亜麻 綿花 交易 カイロ ダマスクス 社会構造と階層: 名士 商人 農村 村長 調停者 経済的影響力 宗教と社会福祉: ワクフ制度 貧民救済 宗教施設 教育 医療 社会福祉 文化的交流: フランス占領 近代化 西洋の影響 教育改革 政治的変動: 地方有力者 権力闘争 民衆運動 政治変動2025/02/17