内容説明
十字軍とは何か。現在でも「十字軍」はイスラームとキリスト教の対立を表象する言葉としてしばしば言及される。しかし、二〇〇年におよぶ十字軍運動を、海を渡る人と物の大規模な動きというまなざしで捉えると、異なった光景が見えてくる。十字軍運動は地中海を利用して人を運び、馬やものを運んだ。本書ではイスラーム史や西洋中世史の文脈にとどまらず、地中海という共通の活動の場を持った人びとの営みとして十字軍を考えてみたい。
目次
十字軍と地中海
1 十字軍以前の東地中海世界
2 十字軍国家の形成と海上輸送
3 対立構造の明確化
4 戦争と共存
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
組織液
12
十字軍における地中海という海がどの様な存在であったのかがざっくり分かります。うーんちょっとリブレットじゃ分量が足りない印象でしたね。ビザンツがノルマン人、クマン人、アルメニア人…など様々な民族を登用していたことは知ってましたが、ノルマン人の征服によって故国を追われたアングロサクソン系のイングランド人がビザンツ艦隊の水兵をやっていたのは初耳でした。『地中海世界の中世史』でもビザンツ艦隊のことがよく触れられていたんで、ビザンツ艦隊についての本が出た時はすぐ読みたいですね。2022/01/12
サアベドラ
6
メインは十字軍の概説で、サブとしてこの時代における地中海の人と物の流れについても扱っている。前者としてはよく書けていると思うが、後者に関しては部分的に触れられているだけで、ちょっと中途半端な印象を受けた。数百年におよぶ争いの歴史を百ページ弱に圧縮しているので、大量の固有名詞を処理できないと読み通すのがツライかもしれない。十字軍の最初の一冊というよりは、全体の流れをおさらいするのに使ったほうがよいと思う。著者の主張については、なにせ記述が少ないので、まあそうですね、程度の感想しか浮かばない。2013/02/11
YS-56
4
西から東へ。十字軍が聖地に到達したとき、新たな時代が始まったのかもしれません。人の流れと交易は地中海を通じて拡大し、やがて東から西へとムスリム勢力の台頭が始まるのです。2022/06/18
カラス
0
「海から見た十字軍」あるいは「十字軍と制海権」、みたいな感じの本。十字軍というと陸路をてくてく歩いて聖地を目指す、みたいなイメージがあったが、意外にも「海」の役割が大きく、補給と兵站は海なしでは考えられないくらいらしい。軍事面にのみ絞った記述で、経済と政治はスルーされているが、その分わかりやすく、十字軍において東地中海は影の主役だったのだなということがよくわかる。十字軍の概説ではなく、十字軍という事象の一部を扱った本なので、概説書にたいする副読本みたいな立ち位置だと思う。2018/12/14
りっちゃん
0
十字軍研究で見落とされがちな、地中海について。海路をとった後期十字軍では地中海は重要な存在。2018/12/11
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