内容説明
イスラームは、7世紀のアラビアで成立した。この時代のアラビアのアラブは、国家をつくらない社会の中で生きていたのだが、いっぱんに想像されるような閉鎖的な部族社会のなかで暮らしていたわけではない。みな、自立した個人として、多様な人間関係を設定して生きていた。国家のない社会で、人間はいかに生きたかを問うたのが本書である。
目次
ムハンマドの時代
1 ムハンマド時代の国家と人びと
2 系譜意識と部族
3 メッカ社会
4 メディナ社会
5 国家の建設
著者等紹介
後藤明[ゴトウアキラ]
1941年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。専攻、初期イスラーム史。現在、東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
6
ムハンマドが生きた6世紀から7世紀のメッカ、メディナのアラブ人社会を史料から復元する。同じ著者の『メッカ』(中公新書)と被る内容が多い。当時も現在もアラブ人の血族意識は日本人から見るとちょっと独特で、説明を読んでいると頭が痛くなってくる程度に複雑。商業都市メッカのほうが氏族制が解体しており、農業都市メディナのほうは血族の絆が強固だった、というのは説得力のあるはなしではある。2012/11/20
ドウ
2
クルアーンも参照しながら、西暦7世紀頃のアラブ社会について概説した本。『預言者ムハンマド伝』まで読み始めてしまった私にはやや初歩的な内容に留まるものの、クルアーンがどのような社会状況下で啓示されたかを押さえるには、薄くてしかも分かりやすい。国家のない社会構造だからこそ部族集団が人々にとり重要であるというのと、マッカとマディーナの都市としての差異の指摘が興味深い。2018/05/20
たね
0
ムハンマド時代のアラビア半島にしっかりとした国家がなかったことは盲点というか、想像もしていなかったなと思った。イスラーム勢力の拡大を授業でやる際の持ってるイメージが更新された。部族の考え方もモンゴルの遊牧民とも少し違うことも意外だった。2024/06/09
古隅田川
0
タイトルの通り、ムハンマド存命中のアラブ社会について記述されている。特にメッカとメディナの人口、部族構成、産業が詳細に書かれている。 当時の部族社会の様子を「創作」と但し書きした上で物語風に説明してくれている。おかげで、当時の部族民の様子を身近に感じられた。部族の長(リーダー)はいなかったこと、隊商からの略奪が日常的に行われていたことに驚いた。 ムハンマドが信仰を広める過程で、政治力、軍事力も併せて獲得して行ったことが述べられている。イスラーム帝国の発展理由を探る上で、貴重な書だと思う。 2021/11/21
samandabadra
0
言語の社会史を学ぶものとしては、最初の最後で言語に研究するところがあるのが気になる。アラビア語も南と北の方言があり、北の方の要素が強いとの話、イエメンをはじめ、記録としては南の方が記録が多いようにも感じたが。最後の方で、アラム語、シリア語といったような、アラビア語に似たような言葉を話した人々が、言葉が似ていたので吸収されたというところも面白い。イラク辺りって、その前のバビロニア時代とかの言語も含めるとずいぶん話されている言語には変遷があるはずだが…とまれ、中心となるムハンマド時代の社会も興味深かったが2020/10/28