内容説明
インドのヒンドゥーとムスリムの関係は多面的で複雑である。そればかりでなく、それは非常にデリケートでホットな現代の政治問題でもある。限られたスペースのなかで総花的に扱うと、舌足らずになり、一般の読者には非常にわかりにくく、誤解をまねく虞れさえある。本書ではポイントを絞り込み、そのかわり、できるだけ丁寧に説明する方法をとった。インドのヒンドゥーとムスリムの関係は、兄弟や夫婦のそれに譬えられることがある。彼らが、日本人には想像もつかないほど、複雑に入り組んだ関係にあることについて、理解を深めていく。
目次
文化の「サラダボール」
1 共生と習合
2 “近代”の到来と初期の改革運動
3 改革運動の新たな展開
著者等紹介
中里成章[ナカザトナリアキ]
1946年生まれ。東京大学文学部卒業。カルカッタ大学Ph.D.専攻、南アジア近現代史。現在、東京大学東洋文化研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yo
5
ヒンドゥー教とイスラム教の関係に焦点を中てたインド史。山川のリブレットなので安心して気軽に読める。イギリスの植民地支配までは、ヒンドゥーとイスラムは共存していて、かなり習合も進んでいたこと、植民地支配をきっかけに宗教の「近代化」が進み、それぞれが分離しようとする動きの中で、それぞれに宗派主義(コミュナリズム)が展開する。ヒンドゥー教側はヒンドゥー・ナショナリズム、イスラム側はデーオバンド運動やアリーガル運動など。そして対立を深め、イギリスの支配を逃れた後、印パ分離に至るという流れのようだ。2016/11/16
ウッチー
3
ガンジーの伝記を読んだので、ついでにインドの宗教対立の歴史を学んでみようと手にとった。ヒンズー教とイスラム教の基礎知識が不足しているので、満足いく理解が得られなかったが、ナショナリズム的な宗教対立は政治や格差が産んだ歪みであり、教義や信仰対象の問題ではない事が伺える。2016/09/18
じゃくお
2
インドでは数多くの宗教が共生しているが、人口の大多数がヒンドゥー教かイスラームを信奉している。近代化とともに宗教がナショナリズムと結合し、結果としてインドとパキスタンの分離が発生した。そのようにヒンドゥーとムスリムの間では線引きが行われているのだが、近代化以前の両者は融和的であり、思想や文化の線引きは曖昧であった。それがヒンドゥーとムスリムの関係を複雑なものにしている。2019/10/02
みのり
1
インド旅行に備えて元々宗教に興味がありネットでこの本を知り読みました。薄くて読みやすい。 植民地化する前に、いかに2つの宗教が入り混じって存在していたかのがよくわかり、その結果、植民地化の与えた影響も理解が深まった。細かい部分は予備知識なしでは分からないところもあったけど、流れを知るには良い本でした。2018/04/25
非実在の構想
1
植民地下でのヒンドゥー教の改革運動を取り扱った本は多い(ような気がする)が、本書のようにイスラムの側の改革まで取り扱った本は珍しい(と思う)。「ムスリムのバラモン」がいたような中世の習合段階から宗教ナショナリズムが興隆していくさまを描く。西洋の近代知がアジアに齎した影響をもっと考えて見たいと思った。2014/08/12
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