内容説明
本書は、中央アジアの人びとによるイスラームの信仰の受容とその後の展開を、他のイスラーム地域との関わりを視野にいれ、かつ政治的・社会的な背景とも関連づけつつたどろうとするものである。そこでは、この地のムスリムたちが、一方的に既成の信仰を受け入れたわけではなく、その確立と新たな展開に多くの寄与をおこなったことが示されるであろう。
目次
ナイポールの謬論
1 イスラーム信仰の定式化
2 イスラームの伝播
3 スーフィズム
4 モンゴルの侵入とそれ以後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
17
中央アジアとイスラームの関りをまとめたリブレット。中央アジア出身の知識人がイスラームに与えた影響や、逆に遊牧民の祖先神話がイスラーム的に読み替えられる様子などいろいろなトピックを扱っている。ウラマーやスーフィー教団が、遊牧民の征服者と都市の定住民の仲介する役割を果たしたというのは、この地域でのイスラームの存在感や権威を考える上で面白い点。ただ初学者には人名や用語の羅列が過ぎ、ある程度の知識がある身からすると踏む込みが足りないという塩梅なので、正直微妙な一冊かな。2023/04/04
サアベドラ
9
中央アジアにおけるイスラームの流れを扱う。ブハラやサマルカンドなどのオアシス都市のムスリム知識人がイスラーム神学・哲学に与えた影響、テュルク人やモンゴル人のムスリム化、中央アジアでのスーフィー(イスラーム神秘主義者)の活動、モンゴル以降の中央アジアのイスラームの動向などが詳しく書かれている。他の世界史リブレットと比べて専門性が高く、見慣れない固有名詞の連続で読むのに少々苦労した。小著といえど、中央アジアとイスラームの歴史をある程度抑えてから手にとるべきなのかもしれない。2012/11/19
いくら丼
7
中央アジアの地名に慣れていて良かった(笑)地図がほぼない……(汗)イスラームには全然詳しくないので、教派や教団の名前は沢山出てくると……うん、まあ、ざっくり読んで済ませた自分が悪いかもしれない(笑)それでも「イスラームと言っても色々ある」という当たり前のイメージは明瞭化してくれた気がします。当初の伝播過程やモンゴル以降の動きは中々興味深い! ウマイヤ朝総督クタイバの移民政策は、インカ帝国のミティマエスを思い出しますね。文字のないインカでも、移民を通して太陽信仰を定着させていました、なるほど文字化の前……!2021/10/18
ぽんすけ
7
このシリーズは読みやすさに定評があるのだけど、今回ぶっちゃけ難しかった。中央アジアの人々によるイスラームの信仰の受容とその後の展開が書かれていたわけだが、この地域でイスラム法学よりスーフィズムが隆興したのは、考えるより感じろの精神がよりマッチしたからかもしれない。独断と偏見だけど、中央アジアっていうとThe草原の民って感じで、スンナ派のイスラム法学者があれこれ難しく体系化した法学より、精神性を貴ぶスーフィーの教えのほうが馴染みそうw2021/01/06
ああああ
6
端的に分かりやすく書いてある、のだろうけどイスラム教の教派を知らんので名前の羅列につっかえまくって分かりづらい。ただ受容とイスラム化の流れは面白い。ゾロアスター教やイスラム以前の徴税のシステム、遊牧民の法、シャーマニズムとも溶け合っている。ごった煮的な場所でも信仰され続けてきたことが世界的な宗教になりえる何かがあったという証拠なんだろう。2014/12/07
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