内容説明
異なる文化的背景をもつ人びとが頻繁に接触する現在、必要とされているのは、ヨーロッパやイスラームなど、複数の集団、さまざまな文化圏を包含する、グローバルな視点での世界史である。本書では、「ヨーロッパ」「イスラーム世界」という枠組みの検討や中世の文化圏の比較、そして交流・衝突の過程の解明をおこない、さらには、現代ヨーロッパのイスラーム教徒、イスラーム過激派の背景を探る。このような試みが、グローバルな世界史像構築への第一歩となることを願っている。
目次
ヨーロッパとイスラーム世界
1 枠組み 集団と歴史
2 比較 文化圏
3 接触 交流と衝突
4 統合 グローバル化
著者等紹介
高山博[タカヤマヒロシ]
1956年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。エール大学大学院歴史学博士課程修了・Ph.D.取得。専攻、西洋中世史・地中海史。東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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futabakouji2
8
シチリア島の歴史について知りたかったのですが、その辺は詳しくなかった。 ヨーロッパとイスラーム世界のことをさっくり知りたいなら、読んだ損はありませんね。2018/10/18
組織液
7
どちらか一方から見た形ではなく、題のヨーロッパとイスラームの他に、正教会圏も含めそれぞれをなるべく俯瞰的に比較しています。ビザンツ皇帝と正教会の関係や、フリードリヒ2世の記述は正直古臭く感じたので、個人的には比較云々より最後の章で語られていた「文明の衝突」論への批判の方が有益な情報に感じられました。『中世シチリア王国』の著者なんでそこら辺にももちろん触れていましたが、思ったほど多くなかったですね。2021/07/31
サアベドラ
6
中世以降の西欧世界とイスラーム世界の交流と対立の歴史を略述。著者の専門である中世と直近の現代に内容が寄っていて、近代に関する記述がすっぽり抜け落ちている。そのため、西欧とイスラームの交流史、関係史としては不十分。書いてあること自体は良くも悪くも普通で、他書で言われていることを手堅くまとめただけ、といった感じ。著者は中世シチリア王国の専門家で、現在の日本の西洋史学界でトップレベルの研究者。普通の研究者の著作なら本書の出来でも別に文句はないけど、この人がこの程度の本を出すのはちょっとどうかと思う。2012/12/21
なつき
4
『世界史リブレット58 ヨーロッパとイスラーム世界』読了。世界史リブレットです、はい。本文にもあった通り、ヨーロッパとイスラーム世界をどちら重点ではなく並列で取り扱う書籍はとくにこのころだとまだまだ貴重なので、有用な一冊であった。有機的に連関性をとらえることの可能な良書だなと。2018/03/25
kanaoka 58
4
中世地中海世界における3つの文化圏(ラテン・カトリック文化圏の西ヨーロッパ、ギリシア・東方正教文化圏のビザンツ帝国、アラブ・イスラーム文化圏のイベリア半島・北アフリカ・中東)の併存、境界地域となったイベリア半島・シチリア島における文化混合、十字軍の征服戦争による宗教的確執、ビザンツ帝国滅亡後のキリスト教共同体とイスラームの対峙。コンパクトですが大変分かりやすい本でした。2016/01/25