内容説明
中東・イスラーム世界の都市を空からみると、密集した住宅や店舗が、巨大な生き物の細胞のようにみえる。表通りの雑踏を抜け、ジグザクの小路から、家の中庭にはいると、噴水の周りを緑の木々が囲み、砂漠の中のオアシスを思わせる。都市に生きる人々は、血縁、地縁、宗教、職業などのさまざまな回路を通じて、人的なネットワークを築いた。都市の内外に張り巡らされた「個のきずな」こそ、人々の生活のよりどころであり、都市の経済や秩序を動かす力となっていた。
目次
都市とイスラーム
1 都市の成りたち
2 都市の空間
3 住民と暮し
4 政治権力と社会的ネットワーク
5 人びとの秩序
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
10
カイロとダマスクスを中心に、イスラーム世界の都市を紹介したリブレット。少ないページ数の割に図版や統計資料が多く、中世から近世にかけてのイスラーム都市の形相がよくわかる。面白いのは「ワクフ」に関する部分で、宗教施設や慈善施設の運営に使われていた喜捨というのは知っていたが、当然悪用する奴もいて、投機目的や私的な蓄財に使われ、肝心の施設は年を経るほどに減っていったというのは興味深いところ。まるで補助金目当てで食い物にされるNPO法人のようである。また個人的なネットワークに頼る行政の姿勢も印象的。2016/05/07
サアベドラ
6
中世イスラーム都市の構造と制度、住人について概説。カイロやダマスクスなどのアラブ都市中心で、イスタンブルやエスファハンなどの記述は少なめ。イスラーム都市は一見、雑然としていて無秩序だけど、実は宗教や商業、地縁などの人々の重層的なネットワークのもとで独自の秩序を構築していたんですよ、というお話。ワクフ(喜捨)制度が投機に使われてたり、ワクフで建てられた隊商宿やマドラサを管理人が横領したりしてたというのはしらなかった。ワクフは神聖なイメージがあったのでちょっとびっくり。2012/12/16
中島直人
3
(図書館)読了。2019/02/15
†漆黒ノ堕天使むきめい†
3
前の巻(15)ではイスラーム全般について、おさらいが出来たが、この本では中世の都市構造や制度が学べた。 ワクフと言う制度は私は聞いたことがなかったが、中世イスラームを語る上でとても重要な制度であったのだと理解した。 イスラーム法のお金にまつわる出来の良さを感じざるを得ない。2015/08/04
sovereigncountr
1
イスラーム世界における都市空間を考える上で重要となる論点を満遍なく扱っている格好の入門書。刊行から時が経ち、巻末の読書案内はやや古びた感があるが、本書自体は色褪せていない。2023/07/08