内容説明
朝鮮半島、日本列島、インドシナ半島のヴェトナム地域は、かつてコミュニケーションの手段としての漢字を共有し、それを媒介にして儒教、漢訳仏教、律令といった中国に起源する文化を受容した。中国を含めたこの地域を東アジア文化圏と規定し、そこに自己完結的な世界を構想する。これが東アジア世界論であり、この世界を秩序づけた固有の政治システムを冊封体制とよぶ。戦後日本の学界に多大な影響をおよぼしつづけてきた、この壮大な仮説の成り立ちにまで遡って、東アジア文化圏の形成を再検討した。
目次
自明ではない「東アジア」の歴史と文化
1 世界としての東アジア文化圏
2 東アジア世界論の有効性
3 漢字文化の伝播と受容
4 中国文化の受容と定着
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
†漆黒ノ堕天使むきめい†
2
東アジア文化圏は漢字という共通点があるのは世界史で学んだが、改めて学び直すと、一時的にその文化圏が消失していることに気づきました。 2015/07/28
佐藤丈宗
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東洋史の大家・西嶋定生の学説を基にした東アジア文化圏論。刊行が2000年なので今読むと歴史学の時代を感じる。この西嶋説のような文化圏論を超えたところに、昨今のグローバルヒストリーがある。比べるとスケールが小さく見えてしまうが、一国史では捉えきれない歴史的なファクターを読むには文化圏という視座は今なお意義を持っている。東アジア文化圏の歴史というよりも、戦後の東アジア文化圏論の史学史として読める。2017/02/28
舌噛
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古代の中国~朝鮮半島~日本の関係について書かれている。薄い本なので気軽に読めた。2016/06/25
zhiyang
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東アジア文化圏の形成について、中国王朝の冊封を軸とする東アジア世界の形成という理論を、古代の朝鮮半島を例に批判的に検討する。「漢字などの中国文明の受容は周辺諸国間で相互発展的になされた」「脱中国の為の中国化」「冊封を中心とする秩序によって文化が伝播し、冊封の秩序自体が周辺諸国で再構築される」などの主張が印象的であった。2013/06/04
Ta Kano
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冊封体制を知るならこれ。2012/10/13