内容説明
中世は説話の時代です。「和歌を詠む私」に迷いなく没入するのが王朝物語の世界だとしたら、「『和歌を詠む私』ってなんだろう?と、ふと考えてしまう私」の視点で書かれたものが説話であるといえるでしょう。鎌倉時代中期に成立した『古今著聞集』は、雅やかな宮廷生活を伝えようとしながら、いつのまにか首尾一貫しない見聞や怪しげな噂を語り、生活感あふれる風刺や笑いを紡ぎだしていきます。天皇や上皇、源頼朝をはじめとする鎌倉幕府の武士たち、高僧と楽人、泥棒に詐欺師、犬・猿などの動物から、鬼・天狗のような異界の住人まで、さまざまなキャラクターが、縦横活躍します。中世人のまるごとの世界観を、ぜひ味わってみてください。
目次
1章 説話の時代・王者の肖像(説話の時代と『古今著聞集』;朝廷の宝蔵と年中行事絵巻;宝物いろいろ)
2章 後鳥羽院と犯罪者たち(博打の顛末;王者と水のイメージ)
3章 きぬかけの道をたどって(成季と徳大寺家;仁和寺周辺の説話;西園寺家と成季)
4章 『古今著聞集』の動物たち(信仰と祭祀、殺生と解脱;高雄の猿・醍醐の天狗;鎌倉幕府の武士たち)
著者等紹介
本郷恵子[ホンゴウケイコ]
1960年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。専攻は日本中世史。現在、東京大学史料編纂所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。