内容説明
『十六夜日記』は、阿仏尼が、我が子の荘園所有権の訴訟のため、都から東海道をくだって、鎌倉に下向した旅を描いています。それは、我が子の権利を守るため、また亡夫の遺言を守るための戦いの旅です。あらたな歌道家を創成するための挑戦の旅でもあります。中世においては少なからぬ貴族女性が、このように、訴訟のために鎌倉へみずから旅をしたのです。阿仏尼は、東海道や鎌倉のどのような風景をみて、歌を詠んだのでしょうか。どのような景物に目を留め、旅空間をどのように『十六夜日記』に書き記したのでしょうか。何に故郷を思い、子や亡夫を想い、涙したのでしょうか。中世の二つの都、京と鎌倉、そしてこの二つを結んだ東海道を、阿仏尼の眼で眺めながら、『十六夜日記』とともに旅をしてみませんか。
目次
1章 都―争いの始まり(プロローグ―『十六夜日記』と阿仏尼;阿仏尼と為家;為家の遺言―争いの発端;鎌倉下向の決意)
2章 下向の旅―東海道を鎌倉へ(近江路―都からの旅立ち;美濃路―旅愁と決意と;尾張路―奉納された歌、書かれた歌;三河路―八橋幻想;遠江路―人びととの再会;駿河路―富士を仰ぎながら;伊豆・相模路―箱根を越えて鎌倉へ)
3章 鎌倉―待ち続ける日々(鎌倉での住い;勝訴への祈り;阿仏尼の死とその後)
著者等紹介
田渕句美子[タブチクミコ]
1957年生。お茶の水女子大学人間文化研究科博士課程単位取得退学。博士(人文科学)。専攻:日本中世文学。国文学研究資料館文学資源研究系教授
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感想・レビュー
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LUNE MER
14
鎌倉は何度か訪れているが、あるとき北鎌倉から鎌倉まで線路沿いに散策していたときに道路脇のやぐらの中に身の丈ほどの石塔をふと見つけ、傍には「阿仏尼の墓」の札。初めて彼女の存在を知ったのがこの時。別の折に極楽寺付近を散策していた時、案内板の説明書にて、月影が谷(海街diaryにも登場)はこの近くであり、阿仏尼がそこに住ったことが十六夜日記に記されていることを知る。これが十六夜日記のことを初めて知った瞬間。そして本書に至る。かなりマニアックな散策になるが、次回の鎌倉散策は阿仏尼を偲ぶルートに決定。2021/10/17
鈴木貴博
2
物語の舞台を歩くシリーズ、十六夜日記。京から鎌倉への旅、そして鎌倉滞在の舞台を、当時から現在までの風景の変遷なども踏まえつつ、歩く。当時の旅の苦労をしのぶとともに、当時の様子と今の対比を思い、面白く読んだ。三河八橋には近々行かないと。2020/02/24
ねここん
0
いつか訪れてみたいと思います。2025/04/24
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