内容説明
いまも昔も、祈る心は変わらない。日記や物語があぶりだす、生きることの本音。
目次
第1章 愛する人は黄泉の国へ―『古事記』『万葉集』の「死後」
第2章 地獄と極楽―『源氏物語』と浄土教という救い
第3章 女たちの「法華経」―和泉式部と『更級日記』、そして遊女たち
第4章 魂よ、よみがえれ―『蜻蛉日記』のミソギと物語で
第5章 平安貴族たちの習俗と「道教」―王朝文学のスパイスとして
第6章 平安京を襲う御霊、物の怪―菅原道真と『源氏物語』『栄花物語』
第7章 交じり合う神と仏―歌僧・西行と神仏習合のゆくえ
第8章 「念仏」を求めた武士たち―『平家物語』と法然のなみだ
第9章 異界のひとびとに出会う―世阿弥の信仰と能に現れる亡霊たち
第10章 「不完全」への信仰―『徒然草』から千利休へ
著者等紹介
佐々木和歌子[ササキワカコ]
1972年青森県生まれ。弘前大学人文学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。株式会社ジェイアール東海エージェンシーの文化事業セクションでJR東海の京都や奈良に関わる歴史文化講座の企画運営や記事制作に長く携わる。史跡の探訪・取材を通じ、歴史上に生きた人物の内面や時代の空気をやさしい言葉で紹介する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はる
6
人にはその折々の心があって、その心にかなうなら、花はつぼみでもいいし、散ったのちでもいい、去りゆくものにしがみつくより、足りなくても今ここにあるものを愛でることで心の静けさを得る。幸せいっぱい夢いっぱいでは文学は生まれない。見渡せば花も紅葉もなかりけり浦のとまやの秋の夕暮れ。2017/06/24
鈴蘭
1
本書は、古事記、万葉集、源氏物語、更級日記、徒然草などの書と絡めて当時の人々の信仰の歴史が書かれている。六条御息所は分かりやすい地獄に落ち、光源氏は自らの愛執に囚われ続けていて、読了後に少し思いを馳せてしまった。平家物語の、南都の焼き討ちをした平重衡が法然にこんな悪人の助かる方法があるなら示してくださいと涙ながらに訴える場面から、平重衡も一人の人間なのだと感じた。古典文学の登場人物が亡霊となって現れ繰り広げられるという「夢幻能」を、いつか観劇してみたい。2021/08/11