内容説明
非人の世界に身を置きながら関白にまで昇りつめた秀吉。あらゆる史料を熟読し、秀頼は秀吉の実の子ではないことも立証。被差別民の新たな活動と役割を中世の視座から明らかにする。
目次
第1部 河原ノ者・非人(犬追物を演出した河原ノ者たち―犬の馬場の背景;大和国北山非人宿をめぐる東大寺と興福寺―奈良坂と般若坂;都鄙の療病寺・悲田寺・清目(カワタ)―救ライ(癩)活動の展開と地方の差別構造
越後国荒河保の「入出非人所」と奥山庄の「ひにんかう屋(荒野)」
重源上人と「乞〓(がい)非人」―建仁二年の狭山池改修碑にみる土木工事と差別された人々
サンカ考
太鼓製作と中世筥崎宮散所
人身売買史断章・現代と中世を交錯する遊女像)
第2部 豊臣秀吉(少年期秀吉の環境と清須城下・繁栄と乞食町;秀吉の出自;秀頼の父;秀吉と陰陽師)
著者等紹介
服部英雄[ハットリヒデオ]
1949年に、名古屋市に生まれる。1976年東京大学大学院修士課程修了、東京大学文学部助手、文化庁文化財保護部記念物課文化財調査官を経て1994年から九州大学大学院比較社会文化研究院助教授、同教授、研究院長を兼任する。十六年間従事した文化財保護行政では自治体による各地の荘園現地調査・中世城館調査、歴史の道調査事業も推進(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AICHAN
40
図書館本。分厚い本(713P)なので読む前に読む意欲をくじかれた。しかし、拾い読みだけど踏ん張って読んだ。日本史の裏側に隠れて見えない被差別民の話で、そこに私の大きな興味があったからだ。河原ノ者は穢多ともいい、中世から主に皮革産業に携わっていた人々。非人は乞食で、ときに街頭芸などをして生活していた人々。どちらも、江戸時代でいえば士農工商の下に位置する最下級の人々。平民でも病者や障害者や犯罪者は非人に落とされたという事実は衝撃だった。ただし寺などが保護した面はあったようだ。秀吉も非差別階級の出身だという。2018/02/27
獺祭魚の食客@鯨鯢
39
秀吉の出自の怪しさは彼の後半生に反映している。日本一の「人蕩し」として出世街道を駆け登った。 前半生の人蕩しと言われる明るさと、晩年の晩節を汚す残忍な行動の暗さは対照的である。司馬遼太郎氏ほ「新史太閤記」でも暗黒の部分にはあまり触れていない。 特に秀次一族への三条河原での公開処刑も、高貴な者へのコンプレックスへの裏返しであろうか。 お寧は決して不妊症ではなく、秀吉に子種がなかったのだと思う。秀頼は秀吉の子とは思えないほどの偉丈夫だった。家康は幕府への脅威としてでもその芽を摘みたいと思った。 2021/10/14
ばんだねいっぺい
23
ふぅ。分厚かった。決して読みやすいとは、言いがたいがサービス精神満点で豊富な事例に触れている点がいいところ。 秀吉は、すごい男。タイムスリップしたら、ぜひ、見てみたい。2016/02/01
魚京童!
17
なんか全然面白くない。2015/05/05
月をみるもの
13
隆慶一郎作品に魅せられて網野史観を学んだ我々世代にとって、若き松浦武四郎が出逢ったサンカの話は涙なくして読めない。秀頼が秀吉の実子ではありえない、、、というのは、誰しもそう思ってて、でも普通の歴史家はまったく言及しない問題みたいなんだけど、ここにど真ん中の直球を投げ込む著者の姿勢は爽快である。最初は、まったく関わりなさそうに見える、この2つ(河原ノ者/非人の歴史と秀頼の出生)が秀吉の出自を通じて結びつく過程に知的興奮を覚えないようでは歴史を学ぶ意味はない。2018/09/23