内容説明
遺跡はどのように捏造されたのか。渦中にあった元文化庁主任文化財調査官が、10年の沈黙を経て、いま明らかにする。
目次
序章 旧石器遺跡捏造の経緯
第1章 「栄光」への軌跡(石器文化談話会の始まり;本格化する発掘活動 ほか)
第2章 失墜した“ゴッド・ハンド”(拡大していく戦果;捏造発覚 ほか)
第3章 捏造発覚から一〇年を経て(見破られなかった藤村の知恵;見破れなかった私の甘さ ほか)
第4章 明日への考古学(三つの過ち;ささやかな私からの提言 ほか)
終章 旧石器遺跡捏造の総括
著者等紹介
岡村道雄[オカムラミチオ]
1948年新潟県上越市生まれ。1974年東北大学大学院文学研究科修士課程国史学専攻修了後、同大学文学部助手。1978年宮城県立東北歴史資料館考古研究科研究員、考古研究科長。1987年文化庁文化財部記念物課埋蔵文化財部門文化財調査官。1993年同主任文化財調査官。2002年独立行政法人文化財研究所、奈良文化財研究所。2008年同所退職。現在、杉並の縄文人と称し、松島湾の宮戸島で環境・歴史・文化について考え、全国の縄文遺跡などを巡る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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つちのこ
34
この事件を追った本をいくつか読んだが、当事者のF(本書では実名)と考古学仲間として仕事をしてきた著者が書いた内容だけに、真実に迫るものを感じた。半面、長年に亘るFの捏造を見抜けなかった点についての反省が薄く、自己保身による言い訳が見苦しく思えた。縄文時代の石器をなぜ前期旧石器であると信じてしまうのか、著者の専門家としての見識とレベルに疑問を感じるが、すべての根源は事件を引き起こしたFによるものであり、多方面に波及した影響と責任はとてつもなく重い。病気を理由にいまだに口を閉ざすF。すべては闇に葬られるのか。2022/04/17
gtn
8
著者は、Fによる遺跡捏造発覚の10日前に、Fの「旧石器時代発見」に依拠した書を発刊した。結果は自著の回収、そして絶版。生き恥をかくことになる。Fの虚構を見抜けなかった自分を責め、Fの嘘が36年間バレなかった理由を学者らしく考証する。F以上に反省している。2018/11/15
卯月
6
文春新書『旧石器遺跡捏造』読了後、毎日新聞取材班の本を読みたいが見つからず、書店で本書を見かけて購入。発覚10年後の2010年刊。著者は若手研究者時代に、在野の藤村と考古学仲間で、後に文化庁調査官。著者が藤村との再会前に準備した質問事項(返答は得られなかったが)見て思ったが、捏造は埋められた遺跡だけでなく、埋め込みに使った石器が元あった場所の歴史も損なってるんだなぁ……。《遺跡は発掘すると消滅するものであり、掘り終わった部分についての再発掘検証はできない》確かに。他者チェックのため、報告書の刊行、超大切。2023/03/20
majiro
6
うーん。結局、学問としての未熟さがあったということなのかなあ。どんな分野でも、あり得ることではあるよなー。こんなに長期間というのはなかなかないかもしれないけど。今はどうなってるのかな。こういうのは、未来に活かすしかないものね。2014/12/09
たつや
5
面白かったです。研究者にこれされたら、一般人は何を信じれば良いやら。2023/04/23