内容説明
アイデアを練る、説明書を書く、漫画を描く、建物を設計する…。そうした活動すべての背後にある、身体・空間に根ざした思考とは。認知心理学の第一人者による集大成。
目次
第1部 心の中の世界(身体の空間:空間は動作のため;身体をとりまく球体:人、場所、物;いまここ、そしてあのときのあそこ:私たちのまわりの空間;思考を変換する)
第2部 世界の中の心(身体は別の言語を話す;点、線、視点:会話と思考の空間;他のほぼすべてについての話と思考;人がつくり出す空間:地図、ダイアグラム、スケッチ、説明、コミック;ページとの対話:デザイン、科学、アート;世界はダイアグラム)
著者等紹介
トヴェルスキー,バーバラ[トヴェルスキー,バーバラ] [Tversky,Barbara]
スタンフォード大学名誉教授、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ教授(心理学)。2018~2019年、Association for Psychological Science会長。記憶、空間的思考、デザイン、創造性に関する数多くの業績をもち、身体化された認知(embodied cognition)の分野を牽引する研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いとう
7
某知能検査では、CHC理論の視覚処理(Gv)に対応するように『視空間認知』指標が設けられた。視空間認知がどのような役割を果たすのかを知りたく購入した。 空間認知に関する能力は記憶、コミュニケーション、推論に関与する。ただし、空間認知だけでなく身体の動きが伴うことでより高度になっていく。このことを数々の実験や文献を紹介して説明している。 本サイトの他レビュアーが指摘しているように、冗長すぎて内容が入りにくい。2023/09/07
shin_ash
5
訳が悪い訳でもなく勿論原文が悪い訳でもないと思うが読むのに大変時間がかかった。しかし空間と動作が思考を創るとは非常に興味深い話である。上手く説明できるほど理解できていないが確かにジェスチャーなんかは自分の為に無意識にやってる気がする。また考える時はなるべく手を動かす様にしているが、それも間違いではなかったのだろう。勿論上手く図に描けたりしてスッキリすることはできないが。なぜ並べてしまうのかとか、確かに大きい量や労力の大きいものは上に描くよねとか無意識にやってる事が空間と動作と認識の文脈で語られる。面白い。2021/02/21
ニッポニテスは中州へ泳ぐ
5
☆=3.5/5 巻末解説読んで先に概観知ってから読むと良い。(前半の内容が結構冗長かつ退屈なので) 本書は先ず何よりも、人が用いる「ジェスチャー」という第一言語についての本である。数学ドリル解くのを補助したり対話に於ける思考共有を促進したりと、ジェスチャーの持つ効用は意外と射程が広い。デネットの言う「思考の道具」の一種とも言える。 更に著者はジェスチャーは空間的言語である事に着目し、人の思考が空間的な操作や配置に基づいているかの論を展開していく。2020/11/12
鴨長石
3
副題の通り、「身体動作と空間が思考をつくる」。つまり今のAIを突き詰めても人間のような存在にはならない。直観的に感じていたことが種々の実験を通じて示されていく。「種をまいて育てて花が咲いてその後種を取る」という話を直線的に書くか円環として書くかでその後連想するストーリーが変わるというのが印象的。本書によると英語では身体動作の語彙が豊富ということだったが、今井・秋田『言語の本質』によれば英語では形容の要素を動詞に入れるのに対し、例えば日本語では副詞となるのでオノマトペが発達している、という違いにすぎない。2023/06/13
Haruki
1
空間における動作が抽象化を生み出す(=スプラクション)、というアイデアをもとに、人間の認知の具体的な構成、要素、概念、発展などを想起的に綴る。認知の法則→1.コストなくして利益なし、2.動作が知覚を形成する、3.感覚が最初に来る、4.心は知覚の上を行く、5.認知は知覚を反映する、6.空間的思考は抽象的志向の基盤である、7.心は欠けている情報を補う、8.思考が心からあふれると心はそれを外の世界に映す、9.私達は心の中にあるものを整理するように、周りの世界にあるものを整理する。主張はこれだけ、後は感じるのみ。2022/02/01