内容説明
近年大幅な精度向上をとげ、あらゆる場面で欠かせないツールになった機械翻訳(machine translation)。その技術はどのように登場し、いかに機能しているのか。よりよく付き合っていくために、その来歴・仕組み・これからを考える一冊。「機械翻訳」とは何か。どこから来て、どこへいくのか?
目次
翻訳をめぐる諸問題
機械翻訳の歴史の概要
コンピューター登場以前
機械翻訳のはじまり:初期のルールベース翻訳
1966年のALPACレポートと、その影響
パラレルコーパスと文アラインメント
用例ベースの機械翻訳
統計的機械翻訳と単語アラインメント
セグメントベースの機械翻訳
統計的機械翻訳の課題と限界
ディープラーニングによる機械翻訳
機械翻訳の評価
産業としての機械翻訳:商用製品から無料サービスまで
結論として:機械翻訳の未来
著者等紹介
ポイボー,ティエリー[ポイボー,ティエリー] [Poibeau,Thierry]
フランス国立科学研究センター(CNRS)研究部長、同センターLATTICE(Langues,Textes,Traitements informatiques et Cognition)研究所副所長。Ph.D.(計算機科学)。専門の自然言語処理のほか、言語獲得、認知科学、認識論、言語学の歴史を関心領域とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えちぜんや よーた
88
2019年11月にDMM英会話を始めてから機械翻訳(Google翻訳)の世話にならなかった日はなかった。だからこそ読んでみたが、言語学や初歩的なフランス語の知識がないと難しい...orz ただ今の技術では機械翻訳とプロの翻訳者がガチで対決すると、後者の方が断然優れているとのこと。チェスや囲碁のように人間がコンピューターに負かされることはないようだ。2021/01/14
Nobu A
7
先日読了の「機械翻訳と未来社会」で知識欲に火が付き、本著に辿り着く。結論から言うと8割方満たされた。身近に十分に浸透している機械翻訳の歴史的背景や具体的なシステム内容が詳らかに語られ、性能評価や今後の課題等、上手く纏まって概観出来る。一方で、「ロバスト」等、安易なカタカナ英語でなくしっくり来る和語での訳出を願う。「interlingua」にSLAでは確立されている表現「中間言語」を当てたのは誤訳。例文に英仏表現が頻出するが、言語学者が加わり英日に差し替えの翻案だったら本著の価値は更に上がったと思う。 2021/04/30
愛楊
6
計算機科学の博士による機械翻訳の系譜学。原著が2017年、本書が2020年9月の出版であり、現在では fastText やバイトエンコーディングでほとんど解決されている課題が、未だ未解決の問題として記されていたりする。日本翻訳連盟副会長の高橋と、機械翻訳を専門とする工学者である中澤による解説の対比が、特に興味深い。高橋も中澤も、翻訳界隈の無闇矢鱈な機械翻訳への敵視を戒めるのだが、中澤はニューラル翻訳の特徴の詳しい解説を与える一方、2024/04/30
ががが
3
機械翻訳の歴史と現状を適度な分量でまとめた本。原著の出版が17年、本書が20年のため、最新の情報は他をあたった方がいいが、素人には機械翻訳のしくみをざっくり知るのにちょうどよい。どんなに精巧な翻訳に見えても基になっているのがデータでしかないのがまったく信じられないが、いい文章を書くにはいい文章をたくさん読め、と昔から言われてきたように、人が言語を認知する仕組みも案外それに近いのかもしれない。言葉の意味とはなにか、文を理解できるとはどういうことなのか、ここ数年はAIの発展でそのあたりがますます不思議に映る。2024/06/24
oryzetum
2
敢えて数学的・技術的な記述は抑えてあるらしく、情報工学に関する知識が全く無い僕でも楽しく読めた。ただ、英語の他、フランス語の例も多数出てくるので、多少はフランス語を知っていた方が読みやすくなるかも。また、原著刊行後の動向や翻訳におけるディープラーニングについても日本の専門家による解説で補完しているが、こちらはやや技術的に深い記述もあるため、読むのに少々苦労した。2020/10/11