内容説明
中国の小説は、唐代に至ってはじめて小話から小説となる。その形態が「伝奇」である。そこには創作意識があり、読者をも想定している。唐の都長安には、官僚になるために中国各地から有為の青年たちが集まっていた。そこから生じる明暗やロマンスなどを踏まえて多くの作品が書かれた。本書では、「人虎伝」(中島敦「山月記」の原典)、「杜子春伝」(芥川龍之介「杜子春」の原典)など十一編を収める。
目次
枕中記
任氏伝
柳氏伝
李章武伝
人虎伝
霍小玉伝
南柯太守伝
謝小娥伝
李娃伝
長恨伝
鴬鴬伝
杜子春伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
耳目之学(不定期更新中)
4
伝記小説集である『唐代伝奇』から11編が収録されています。玄宗と楊貴妃の『長恨伝』や、中島敦『山月記』の元ネタとなった『人虎伝』が有名です。私が一番好きな話は『李娃伝』です。落ちぶれた男を遊女の娃が支え、成功に導くという話です。歴史的英雄の活躍の裏には、内助の功があることが多いですよね。例えば、魏の曹操の卞氏や光武帝の陰麗華などなど挙げればきりがありません。このように男性を成長させ、プロデュースする能力に優れた女性の力というものは偉大です。でも、そんな女性に惚れられた男性の器も大きいのでしょうね。2011/05/30