目次
「カインの末裔」―「王国」建設の夢とその挫折
「一房の葡萄」―恩寵の日の追憶と喪失
有島武郎とニーチェ―離教そして「本能的生活」構築の支柱として
有島武郎の方法―リアリズムへの志向と本能主義の狭間から
「老船長の幻覚」―「生命」回復への願望
『宣言』論―「奇妙な日常」と「奇怪な姿」への出発
「クラゝの出家」―歴史的背景の捨象と「花婿」の不在
『或る女』論―「醜」と「邪」の底に何があったか
大正八、九年の有島武郎
「大洪水の前」―湧き返る相対界の混沌〔ほか〕
著者等紹介
石丸晶子[イシマルアキコ]
1935年東京に生まれる。東京大学大学院博士課程修了(国文学専攻)。東京経済大学教授
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感想・レビュー
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澄川石狩掾
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再読。 有島武郎の作風の「分水嶺」は『三部曲』にあるとして、これら聖書を題材とした戯曲を中心に有島のテクストを論じている。また、有島のニーチェ受容についても精しく論じている。 巻末に収められた「「女の視点」・「男の視点」覚え書」は、「もしも、女性は「女の視点」でテクストに対せ、という男性が真実いるとしたら、それは実は、女性に対する逆差別であり、女の言い分を聞いてみたい、聞いてやろう、というこの社会にあって優位に立つ男のエゴイズムが、そこには隠されていないだろうか」と結ばれていて、確かに、と思った。2020/05/17