出版社内容情報
〔収録作品〕人形の家/幽霊/人民の敵/野鴨/ロスメルスホルム/付・作品解決本巻と第5巻には、イプセンの代表作が収録される。イプセンの名を世界的なものにした「人形の家」をはじめ、「幽霊」、「人民の敵」、「野鴨」等のいわゆる社会劇に、象徴主義的色彩も帯びる「ロスメ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
33
収録作品:「人形の家」、「幽霊」、「人民の敵」、「野鴨」、「ロスメルスホルム」。 ◯「人民の敵」: 舞台はノルウェー南部の湯治場の町。 主人公のストックマン医師は温泉管理委員会の委員も兼務している。 兄のペーテルは、市長兼警察本部長、温泉管理委員会の委員長。 ある日、ストックマンは、一通の手紙を受け取る。 それは、温泉全体の水質が黴菌だらけだという報告書だった。 前年、湯治客の中から何人か病気に罹った者が出たので、彼が内密に調べていたのだ。 ところが、この事実を兄の市長に報告したところ、市長は改修工事→2024/10/23
うちこ
9
聖なる水の効果を求めて人が集まるインド寺院を題材にした映画の原作がイプセンとあり、「人民の敵」を読みました。 原作は温泉の効能を求めて人が集まる地域が舞台でした。 <共同幻想と既得権益 V.S. 事実> 双方の意見に日和るメディアの様子も描かれ、その時代によって発生する事象と重ねて読むことができます。 「みんなのため」の「みんな」の捉えどころのなさと、「善性しぐさ」の気持ち悪さの両輪で物語が転がっていき、事実を引っ込めないことには変化を恐れる不安を止められない権威者と民衆の気持ちの描写がリアルでした。2024/09/19
てれまこし
4
虚偽や欺瞞の上に築かれた幸福が、真実も暴露によって瓦解し、何の希望ももたらされない悲劇的な結末を迎える。しかし、運命への服従を確認するためではない。それは自由主義思想の興隆と守旧派による反動を背景としてもっている。イプセン自身は守旧派を軽蔑しているが、自由主義の俗物性もまた懐疑の対象となる。保守・自由の対立の上に立って、より高貴な理想をもつ精神貴族の必要を説く。恐らく真実の重みに一人で耐えられる強さを持つ個人のことなんであるが、ニーチェ同様、俗流化されれば、保守革命家による党派政治への嫌悪にもつながる。2019/01/24