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出版社内容情報
宮本 常一[ミヤモト ツネイチ]
著・文・その他
香月 洋一郎[カツキ ヨウイチロウ]
編集
内容説明
萩という町が、何故、古い城下町の佇まいを多分に残して今日に至ったのか。見島・萩六島・周辺農山村漁浦をめぐり、萩の町のなりたちと背後の村々との密接な結びつきをよむ。
目次
萩
見島へ
見島のくらし
見島の昔
羽島
相島
尾島
櫃島
大島
川上
石と宮座
佐々並から藤蔵へ
仙崎付近
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
41
萩ではなく、あくまで萩付近。その為萩に関する記述は前半四分の一程度に留まり、大部分は萩近くの離島や山村の考察に当てられている。萩というと小京都的イメージがあるだが、そのイメージを与えるものが明治維新で切り捨てられたものだいう考えは面白い。過去の不要物が現在の宝となっているのは面白いなあ。あと都市部とその周辺の結びつきとかも。離島、山間部に関する部分はやはり過疎とかダムに関するものが中心となっていて、著者の関心の中心がここにあるということを示している。後書きで書かれた当時と現在の対比もあり、それも興味深い。2014/08/30
きいち
31
文化は決して孤立して存在するものではない、という高らかな宣言。萩の町の今があるのは、守ろうとする住民の意志と、それを損得づくで支える周辺の村々の営みによるものだ、と。◇その意志は、港の整備などのために負ってしまった負債を返しきった見島や櫃島の住民たちのものでもある。現金を作り生活を切り詰めるギリギリの苦闘。そして返済終了後も同じ生活を続け記念に小学校を作る…まさに、目に見える「公共」と感じた。◇「観光観光と声の大きい者ほど郷土の持つ資源に無関心」というのは今も変わらぬ。企業内で改革改革という者と同じだな。2017/05/14
徳島の迷人
0
周防大島に生まれ育った宮本常一の萩付近の旅の記録。江戸時代の萩は周防・長門国の政治的拠点で、周辺地域を繋げる役があった。維新で世を変えるため急進派からは救いのない町にされた。萩沖合の島々の記述が多い。見島では蔀戸があるのが漁家、引戸なのが農家。漁家は経済状況で家を変え、農家は何代も同じ家。石囲いの墓地と古墳があり、歴史は意外に長い。かつての村は今の企業体に似て、その感覚が昔を表す役に立つ。羽島は萩の子供を預かるほど裕福な島。しかし義務教育により通学のために萩へ子供を寮に出すと大人たちも寂しくなり島を離れた2021/08/09
Hirotsugu Fujii
0
櫃島についての記述を求めて、読んでみた。歴史は権力者の視点で書かれるけれど、萩沖の見島に、萩奥の阿武郡部に在った鎌倉時代から続く歴史や人の営みに思いが拡がり、とても興味深い。忘れられた日本人翁が、明治期にハワイやミッドウェーに出稼ぎに行き、発動機付き船の技術を伝えた事。島や村自体が借金を背負って、協力して完済した事。近代化や資本の理不尽。毛利氏以前の見島や阿武郡の暮らし。思いを馳せてみる。実家にある村史の執筆者も登場。「鍋山」が懐かしい。阿武川ダムの湖底にあった生活。辺境の人々の生活は厳しく美しい。2019/03/03