内容説明
二人とも非政治的な詩人だが、書くことだけで不可視の「政治」により強制的に内と外に分け隔てられて逢えなくなっている。とは言え、本来的に「流亡/亡命」は詩人にとってパスポートの言葉であるといえる。そしてオーセルも筆者も、詩に限らずエッセイから論文まで全てが本質的に〈詩〉であり、パスポートなのである。
目次
第一部 ツェリン・オーセル 詩一九篇(劉燕子訳)(末路!;一枚の紙でも一片の刃になる;祖国という言葉はほんとうに怖い;ここは隠語、暗号、ひそひそ話があふれかえっているところ ほか)
第二部 劉燕子 詩二九篇(チベットの秘密;握りしめ合う大雪;藍い雪は陽炎のように立っている―「六四」追悼;四季 ほか)
第三部 唇で踊る闇のハルモニア―解説に代えて ツェリン・オーセル&劉燕子(出逢い;「チャイナ・モダニズム詩の延安」で;「詩人は神の申し子」として;アイデンティティの再形成 ほか)
著者等紹介
茨仁・唯色[ツェリンオーセル]
チベットの詩人・作家。1966年、文化大革命下のラサに生まれる。2003年、エッセイ集『西蔵筆記(チベット・ノート)』を出版したが、中共中央宣伝部と中央統一戦線部は「重大な政治的錯誤がある」と発禁処分を下し、さらに「自己批判」と政治的「過関」を求めた。オーセルは国内亡命に追いこまれたが、「著述は亡命、著述は祈祷、著述は証人」をモットーに創作し続けている。特に『殺劫―チベットの文化大革命』は厳重に封印された歴史のタブーを明らかにして国際的に反響を呼び起こした。2007年に「ヘルマン・ハミット賞」、2009年に「林昭記念賞」、2010年に「勇気あるジャーナリスト賞」などを受賞した
劉燕子[リュウイェンヅ]
現代中国文学者、詩人。湖南省出身。留学生として来日し、神戸大学大学院で学術博士を取得。大学で教鞭をとりつつバイリンガルで執筆活動を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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