出版社内容情報
ウェルギリウス[ウェルギリウス]
著・文・その他
河津 千代[カワヅ チヨ]
翻訳
目次
ウェルギリウスの生涯
牧歌
農耕詩
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
48
アルカディアとはギリシアの一地帯を差す地名ですが、この言葉から美しい理想郷を想像する人のほうが多いはず。そのイメージは、ウェルギリウスが『牧歌』のなかで「発見」したもの。「我アルカディアにもあり」というプッサンの絵でも有名な成句の示すとおり、この理想郷には死も、恋の苦しみも、理不尽な出来事もありますが、家畜を飼う、素朴で教養高い牧人たちが牧神たちと歌いながら慎ましく暮らすこの場所は、何と優しく美しい場所であることでしょう。詩人の人生や平和への思いとも混じり合うその苦くて甘い楽園をうっとりと堪能しました。2018/05/15
ラウリスタ~
8
『牧歌』のみ早足で読了。いわゆる「牧歌的」な、田園で歌合戦をしたり葦笛を吹いたり、という歌もあるのだが、全10歌の中には、動乱の時代とそこでウェルギリウスが直面していた社会問題(カエサル、内乱、帝政へ。退役兵のための土地没収、返還請求)が色濃く反映されているもの(第一歌含め)がいくつもある。田園の幸せは、都会人が失った故郷を懐かしみながら作り出すもの。牧歌の伝統は、ラテン文学ではその始まりからして、故郷・楽園の喪失と不可分だった。解説が充実しており、詩を読むだけでは分からない時代背景が分かるのがよい。2020/11/06