出版社内容情報
望月 紀子[モチヅキ ノリコ]
著・文・その他
内容説明
「ドウシテ、パパチャン、ドウシテ?」イタリアの作家・詩人・劇作家であるダーチャ・マライーニ。民族学者の父・フォスコ・マライーニとともに一家で来日、2歳から9歳までを日本で過ごし、終戦までの約2年間、名古屋の強制収容所でのあまりにも苛酷な飢えや寒さを経験する。フェミニズム、68年の「異議申し立て」の旗手として時代を駆け抜けてきた作家の原風景となった“もうひとつの物語”。
目次
ダーチャ・マライーニと父と妹の著書と母のノート
マライーニ家の人たち
小さな旅人
日本
札幌
宮沢レーン事件
京都
「さようなら、京都」
“もうひとつの物語”―天白の収容所
東南海地震と名古屋空襲
広済寺
再会と帰国
その後のマライーニ家の人たち
痩せっぽちの少女
『ヴァカンス』後のダーチャ・マライーニの作品
著者等紹介
望月紀子[モチズキノリコ]
東京外国語大学フランス科卒業。イタリア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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吉田あや
74
「私は旅をしながら生まれた」2歳で故郷シチーリアを離れ、日本へとやって来たダーチャを含むマライーニ一家は身に覚えのないスパイ容疑がかけられ、戦争により日本の敵国人となった一家は名古屋の強制収容所で2年もの月日を過ごすことになった。生かさず、殺さずの最小限の食事と劣悪な環境を強いられた凄まじいまでの体験は、のちに彼女を象るひとつの大きな核となり、文学へと結実していく。マリア・カラスやパゾリーニ、杉原千畝など時代のリンクと不思議な縁に、また続けて読みたい本が連なっていく。(⇒)2020/05/15
unpyou
4
1943年のイタリア降伏は、日本在住のイタリア人たちに友邦国人から敵国人となるのかどうかの選択を突き付けた。連合に着いたイタリア王国にかわりムッソリーニによるナチ傀儡政権への忠誠を誓うか問われたのだ。後に作家となるダーチャ・マライーニの両親は拒否。「イタリア人は嘘つき、裏切者だ」と罵る特高警察により一家は収容所に収監される。アイヌ研究のため来日した親日家の研究者一家が辿った極めて過酷な運命と、幼女であったダーチャに日本人達が注いだ暖かい眼差しとの対比が印象的。父フォスコの著書「随筆日本」も読みたい。2017/05/18
ソウ
2
非常に興味深い題材。イタリア人女性作家ダーチャ・マライーニ氏がどのような人で、どのような本をこれまで書いてきた方か知らなかったのが残念。機会があれば読んでみたい。少女時代に日本という異国で過酷な抑留生活(同盟国から敵国人に転落)を経験。その経験がその後の彼女の人格形成にどのような影響を与えたのだろうか。2015/07/21
yoneyama
1
ダーチャの作品のテーマ、「牢獄からの解放」は日本での7歳から9歳を過ごした強制収容所時代の体験の影響が強いことは間違いない。ダーチャは、記憶を容易に文章にできず、ずっと先送りにし続けているが、いつか必ず文章にすると書いていた。http://aach.ees.hokudai.ac.jp/xc/modules/AACHBlog/details.php?bid=713&cid=72015/06/03