出版社内容情報
近江 吉明[オウミ ヨシアキ]
著・文・その他
内容説明
本書は、市場経済の動きに巻き込まれ、領主制というシステムの混乱が誰の目にもはっきりと映るようになった、一四・一五世紀フランスの「領主制の危機」ともいわれる、その危機状況を捉えなおしたら何が見えてくるのかということに、こだわっていくことにある。しかも民衆蜂起という比較的情報量の多い事象の分析を切り口に、当時の社会が、さらには民衆がどのようにして目前の構造的な危機状況に対応していたのかを究明することによって、その時期に理解された諸問題・諸矛盾を明確にし、そうした状況下で、普通の人間としての民衆が多くの誤解・偏見・優柔不断・しがらみを抱えながらどのように悪戦苦闘したのかを明確にしてみたい。むしろ、うまくいかなかったところに着目することが、今日の問題の所在を明らかにし二一世紀を展望する場合の示唆につながるのではないかと考えたからである。換言すれば、フランス中世後期社会の危機的状況を本書では「黒死病の時代」という表現で一括することになるが、そうした現実の下で、その時代を生き抜いた民衆自身がそれにどのような不安・あがき・失望を抱き、如何なる危機克服の方向・希望を持ち、対応・行動したのかを、そしてどのようなメッセージを後世に遺したのかを、一三五八年に発生したジャクリー蜂起分析を通して探り出そうとした。
目次
第1章 ジャクリー研究の歩み
第2章 ジャクリー蜂起勃発の背景
第3章 E=マルセルとパリ都市民蜂起
第4章 ジャクリー蜂起の勃発
第5章 ジャクリー蜂起における蜂起衆の成立とその展開―「特赦状」の分析から
第6章 一三五八年ジャクリー蜂起鎮圧をめぐって
第7章 ジャクリーJacquerieの伝統
著者等紹介
近江吉明[オウミヨシアキ]
1950年山形県酒田市に生まれる。’72年専修大学文学部人文学科卒業。’74年立教大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、専修大学文学部教授。共著に「ヨーロッパ中世の民衆と蜂起」「フランス革命とナポレオン」がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。