出版社内容情報
日本の森林は動植物をはぐくむ力が特段に強い。これは単に林産物が豊富になるだけではなく、農業、内水面漁業、沿岸漁業の生産力も引き上げる。だが、そのせっかくの資源を有効に使えるかどうかは、人間がどういう資源利用の仕組みを作るかにかかっている。そういう観点から、徳川期以降の農林漁業を歴史的にふりかえり、農林漁業を再定義する。そのうえで現在の農業の問題点を洗い出し、実際の事例観察から農業を超えた農業のあり方を模索する新・農業論。
【目次】
序 アンチ食育から農林漁業を考える
第I部 農林漁業の日本経済史
第1章 森林の秘密
1 炭と日本人
2 高森林率と高人口密度の奇跡
3 日本の森林の悲しい「育児放棄」
第2章 徳川期の森林管理
1 徳川初期の過伐採
2 徳川システムに関する誤解
3 徳川期の森林管理と農業・漁業
第3章 明治維新と林政近代化
1 黒船ショックと森林
2 明治維新政府の農林漁業構想
3 徳川システムへの回帰
第4章 戦時増伐から拡大造林へ
1 戦時増伐
2 連合軍総司令部統治下の農林漁業改革
3 拡大造林
第5章 森林管理の稀少事例
1 串原村の風土
2 奥矢作森林塾の模索
3 松笠の山と人
第Ⅱ部 農林漁業の凶兆
第6章 農業ブームの虚構
1 リーマンショックとコロナショックと農業ブーム
2 実態把握の放棄
3 民主主義から強権主義への移行
第7章 漁業政策の混迷
1 水産特区の空騒ぎ
2 漁業法改訂の錯誤
3 目利きの退潮
第8章 森林荒廃の含意
1 伐採先延ばしの矛盾
2 森林経営管理法の不気味
3 林業センサスの換骨奪胎
第9章 農林漁業の再定義
1 商工業と農林漁業
2 AIと農林漁業
3 教育と農林漁業
第Ⅲ部 農林漁業への新たな視座
第10章 日本食への向きあい方
1 だ し――さまざまな食材の繋ぎ役
2 醤 油――蔵つきの菌との会話
第11章 野生動物への向きあい方
1 とめ刺しと解体――殺し方と生き方
2 めだか――交配の魅力
第12章 花木への向きあい方
1 桐下駄――粋な美の纏い方
2 花 卉――暮らしの潤い
引用文献
あとがき
人名・組織名/事項索引




