出版社内容情報
大奥は春日局の台頭以降、将軍世子の生育の役割だけでなく、幕府の運営に深くかかわってきた。松島(1709?73)は公家の桜井家に生まれ、九代将軍徳川家重から十代家治の時代に将軍付老女として大奥を掌握した。家重は政策実現のため奥向の統括者である松島と田沼意次を両輪になるように重用し、家治はそれを引き継いで二人に多くの政治的裁量を委ねた。将軍たちを支えた知られざる権力者の実像に迫る。
【目次】
はじめに 過小評価されてきた大奥の権力者
Ⅰ 松島以前の大奥
1 大奥の権力者たち
奥女中制度とその役割
大奥権力者の系譜
2 八代将軍吉宗の大奥政策
女中数の削減
大奥に関する法度の完成
大奥ルートのシャットアウト
贈答行為から賄賂性をなくす
寺社への厳しい政策
Ⅱ 九代将軍家重に仕える
1 誕生から世子家重付となるまで
生家桜井家と姻戚関係
比宮の江戸下向
比宮死去により家重付に
二人の側室
九代将軍家重
田沼意次との蜜月
2 大奥の実権を握る
家重の将軍就任と大奥
世子家治と五十宮の縁組
姫宮・姫君の出迎え
三井越後屋の幕府御用
越後屋の五十宮周辺への攻勢
越後屋の松島接待
五十宮出迎えの意味
3 家重の両腕としての松島と田沼意次
霊運院造営の経緯
幕府の祈祷寺となる霊運院
一橋家と島津家の縁組
松島の働き
将軍近親者との紐帯
4 上使としての松島
御城使とは
上使はどこに遣わされるか
二つの日記にみる上使の実例
松島、尾張家・一橋家へ
竹姫(浄岸院)御守殿への上使
Ⅲ 十代将軍家治に仕える
1 松島への内願と権勢
家治の将軍就任と大奥
役人の昇進に関与
祐天寺の下馬札と寺格
伏見宮家の相続
松島と芝居
2 田鶴宮出迎えと江の島信仰
松島一行の行程
三井越後屋の御用
将軍家の江の島信仰
巳年生まれの家治と江の島弁財天
3 再建を大奥に頼る濟松寺
祖心尼と濟松寺の縁起
濟松寺、再建を大奥へ内願
田沼意次への手入れ
4 寿賀宮出迎えと気賀宿
気賀宿とは
寿賀宮出迎え・往路
松島、天皇に拝謁する
寿賀宮出迎え・復路
御台養女とは
本陣中村与太夫との交流
5 大名家と折衝する松島 平島公方の内願
平島家と蜂須賀家
平島義宜、松島を頼る
和解交渉
平島家一件にみる松島と幕閣
6 家重を祀る妙定院
妙定院と岩橋
松島・岩橋の信仰・寄進
家重を心の依り代に
Ⅳ 松島の死とその後の大奥
1 松平大和守家との関係
松平大和守家とは
大和