出版社内容情報
古代ギリシアに端を発し、十八世紀から復権してきた自然誌において、南部アフリカの狩猟採集民・先住民として知られるブッシュマン(サン)は、人間と社会の原初的な姿を理解する鍵となると考えられてきた。しかし、現地での長期フィールドワークを通じて、こうしたイデオロギーには回収しきれない彼らの豊かな文化や生活世界が見えてきた。本書では、ブッシュマンの子育てについての詳細な分析を通じて、人間と社会の成り立ちについて再考する。
【目次】
序 子育ての危機?
育児にまつわる不安や孤独
社会状況の変化
泣きと授乳
病気、発達、しつけ
人間関係の変化
第Ⅰ部 子育ての自然誌に向けて
第1章 カラハリ砂漠のブッシュマン
世界の果て
最後の狩猟採集民
広い生活域と低い人口密度
狩猟・採集に基づく食生活
少子傾向と長い出産間隔
定住化・集住化
生業と社会
京都学派の自然学
山岳家とリーダーシップ
自然と文化
開かれた知
霊長類と社会
自然への眼差し
第2章 リンネ、ルソー、ダーウィンにおける自然誌の復権
ナチュラル・ヒストリー
神の造った秩序
自然の体系
リンネの使徒たち
人間の分類
自然と人間の記述
ルソーの野望
言語の起源
不平等の起源
自然人の理念型
時代の先駆者
自然誌家ダーウィン
自然選択
種の変化をめぐる考察
人間の由来
自然の観察
第3章 自然に学ぶこと、遊びを通じた成長
永遠の森から
キリスト教の桎梏
価値観の転倒
総合科学としての自然誌
自然社会の研究
子育て論の重要性
ギリシア哲学の再評価
遊びの哲学
遊びを重んじる教育論の展開
産業社会の進展と遊び論の衰退
第4章 母性神話の復権
人間とは何か
愛着理論
狩猟採集社会における子育て
乳幼児と母親との間の関係
乳幼児と父親、他の大人、年長児との間の関係
ヒト本来の子育て
アロ・マザリングへの注目
親密な父親たち──許容的適応としての子どもモデル
進化史的な意義
「ヒト本来の子育て」再考
第5章 心理学と人類学の方法論
人間性を探究するためのアプローチ
心理学による個人の見直し
仮説演繹法を用いた実験研究
客観的な視点から心の成長を理解する
人類学による社会の見直し
フィールドワークを通じた参与観察
実践者の視点から社会・文化の再生産を理解する
心理学と人類学
日常的な相互行為への注目
コミュニケーションの民族誌
根本的経験論あるいは方法論的行為主義
相互行為の人類学と言語社会化論
再び「子育ての自然誌」へ
第Ⅱ部 狩猟採集社会における子育ての相互行為分析
第6章 養育者─子ども間相互行為の発達
子育ての自然誌に向けて
システムとして



