出版社内容情報
熊谷直実(1141年から1208年)武将。
東国の下級武士の家に生まれ、治承・寿永の乱においては功名を求めて獅子奮迅の活躍。一ノ谷合戦でついに平敦盛を討ちとるに至ったが、それを契機に出家したと伝えられる。所領にかける激しいエネルギーを、浄土への情熱に転化させたその生き方は、日本人に長く愛されてきた。本書は史実の中に見える実像と、後世の文学・芸能において語り伝えられた人物像を鮮やかに描き出す。
内容説明
敦盛との対峙は何を変えたか。武士らしすぎた男の生涯とその残響。
目次
序章 熊谷直実とは何だったのか
第1章 生い立ちと生き方
第2章 敦盛を討つ
第3章 出家と往生
第4章 熊谷直実伝の展開
終章 熊谷直実から何を学ぶか
著者等紹介
佐伯真一[サエキシンイチ]
1953年千葉県生まれ。現在、青山学院大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スプリント
8
一ノ谷の合戦で平氏の若武者平敦盛を打ち取りその後出家した坂東武者。 その言い伝えは真実なのかを史料を元に考察しています。2024/01/28
フランソワーズ
6
史実を追った評伝というよりも、「直実=蓮生」が当時から現代に至るまでに及ぼした”中世武士の精神”の文化論に近い気がします。なので『平家物語』、『吾妻鏡』、『法然伝』等を読み込むことで見えてくる直実という一介の武士の生き様がありありを窺えます。特に直実の場合、中世人の特徴である「武家」と「宗教」という二つを生きたケースとして、興味深い事例にあたり、しかもその間で煩悶する姿も描かれている。天下国家に影響を及ぼすような大物ではないものの、その生涯から最も実像に近い中世人の典型と言えるのではないでしょうか。2024/05/12
鈴木貴博
3
熊谷直実、出家して蓮生の評伝。功を求める勇猛な東国武者であったが、平家物語、吾妻鏡に記される「事件」を機に発心し出家したとされる。法然の弟子となりその道でも足跡を残した。本書は伝承に包まれた直実の生涯の史実を明らかにしようとするほか、なぜ直実の「物語」が愛好されひとつの文化となるに至ったかについても考える。直実を考えることは結構広く、深い。2024/03/10