出版社内容情報
それぞれの時代に生きた教育思想家たちは、何に悩み、どのように闘争し、思想を生み出してきたのか。そこから見えてくる教育の本質。いまに伝わる西洋の教育思想は、当時の政治的・経済的・文化的な状況とその展開との関わりの中で、どのような人間観に基づき生まれ、どのように論じられ、どのように実践されてきたのか。それぞれの時代に生きた教育思想家が、当時の社会状況の中で、何に悩み、どのように闘争し、思想を生み出してきたのか、その人間像を描きながら、教育思想の源泉を探るとともに今日的意義について考える。
はじめに
第1章 古代・中世の教育論:西洋の教育的理想の源流
1 古代ギリシア――ポリスの市民教育
(1)スパルタとアテナイ
(2)ソクラテス
(3)プラトン
Column 1 ソフィスト――古代ギリシアの社会科学者たち
Column 2 アリストテレス――ポリスの中での人間形成
2 古代ローマ――地中海帝国における弁論家教育
(1)キケロ
(2)クインティリアヌス
3 中世ヨーロッパ――キリスト教社会と教育
(1)アウグスティヌス
(2)トマス・アクィナス
第2章 ルネサンス・宗教改革期の教育論:「近代西洋」の人間観の発生
1 ルネサンスと新しい人間観――人文主義の思想家たちの人間観
(1)エラスムス
(2)ラブレー
(3)コレット
2 宗教改革と新しい信仰――ルター
(1)宗教改革の背景
(2)宗教改革は教育改革でもある
Column 3 メランヒトン――ドイツの教師
3 汎知教育による平和への願い――コメニウス
(1)平和への願い
(2)汎知教育
第3章 啓蒙主義と教育論:近代的個人の教育可能性
1 知性あり,有徳でタフな実務的人間の形成――ロック
(1)新興ジェントリー層の代弁者
(2)社会・人間に関する近代的原理の提案
(3)知性あり,有徳でタフな人間を育てるための習慣形成
(4)労働学校案
(5)評 価
2 素朴な友愛に溢れた自然人の生成――ルソー
(1)上昇志向の涯てに
(2)逆説の啓蒙思想
(3)自然の法則に従っての教育
(4)評 価
3 自律的意志の主体の育成――カント
(1)几帳面で真摯な生活
(2)啓蒙主義に徹した思想
(3)評 価
第4章 近代教育学の成立とその論理:すべての子どもに対する教育方法
1 八転び七起きの苦闘の生涯――ペスタロッチ
(1)八転び七起きの人生
(2)すべての子どもの教育可能性
(3)貧困の根本的な解決の追求
(4)評 価
2 幼稚園の創設者――フレーベル
(1)自分の活動の舞台を発見した生涯
(2)イツロマン主義の教育論
(3)家庭から社会へ
(4)評 価
Column 4 モンテッソーリ――幼児への知的環境の提供
3 科学としての教育学の確立――ヘルバルト
(1)早熟の天才
(2)科学としての教育学の確立
(3)評 価
第5章 近代公教育制度と教育論:学校教育の制度化
1 フランス――革命の理念に基づく共和国国民の創出
(1)歴史的背景
(2)フランス革命期
(3)近代的教育制度についての原理の提案
(4)政体の振り子期
(5)公教育制度の成立へ
Column 5 デュルケーム――有機的連帯によるアノミーの克服
2 イギリス――工場労働からの児童の保護
(1)歴史的背景
(2)工場法制定による児童保護
(3)教育を通じての社会問題発生の予防
(4)ボランタリズムによる民衆教育
(5)公教育制度の成立へ
Column 6 ジェームズ・ミル――不幸を救済することに対する政府の責任
3 ドイツ――国家統一への願いと「上からの」近代化
(1)歴史的背景
(2)啓蒙専制君主による臣民教育
(3)プロイセン革命期の国民教育構想
(4)ドイツの国家統一と公教育制度の成立
Column 7 バセドウ――汎愛派の教育思想と運動
Column 8 ケルシェンシュタイナー――公立学校での教育改革の展開
4 アメリカ――実務的人間および民主主義の人民の育成
(1)歴史的背景
(2)植民地期の教育
(3)独立期における新たな教育の必要
(4)公教育制度の整備とアメリカ社会の発展
Column 9 エマソン――アメリカの知的独立宣言
Column 10 オルコット――子どもの感情,思考,表現の尊重
Column 11 パーカー――公教育の内容の「質的改善」
第6章 新教育運動と教育論:近代学校教育の修正要求
1 ヨーロッパにおける新教育運動の発生と展開――近代的な全人教育の学舎
(1)ヨーロッパにおける新教育運動の発生の背景
(2)イギリスおよびフランスにおける新教育運動の発生
(3)ドイツにおける田園教育舎運動
(4)オットーによる教授の改革
Column 12 ケイ――働く女性の母性保護の要求
2 アメリカにおける新教育運動の発展――デューイ
(1)デューイの生きた時代
(2)近代的原理に代わる新たな社会原理の提案
(3)人間の知性に対する信頼
(4)生き方としての民主主義
(5)経験主義の学習指導原理
(6)教育を通じての社会改良
(7)教師の専門性
(8)評 価
Column 13 キルパトリック――プロジェクト・メソッドと「生きるに価値ある生活」
Column 14 パーカースト――ドルトン・プランと「恐れるものなき人間」
3 現代に続く新教育運動の学校――「自由」を生きる人間の教育
(1)20世紀初頭の西洋の時代状況
(2)シュタイナー
(3)フレネ
(4)ニール
第7章 現代の教育思想の潮流:「近代西洋」の教育論の超克の試み
1 『教育の過程』から『教育という文化』へ――ブルーナー
(1)社会的・政治的な関心をもった心理学者
(2)『教育の過程』――「構造」と「発見学習」
(3)教育と文化――個人の可能性と社会的公正
2 規律・訓練装置としての学校――フーコー
(1)権力と知
(2)学校規律
(3)自由の実践
3 「学校化」された社会に対する疑問――イリイチ
(1)批判すべき「学校化」の意味
(2)「脱学校化」への試み
(3)「コンヴィヴィアリティ」という生き方
4 教育を支える人間学的考察――ボルノー
(1)言語における人間の自己生成
(2)教育における非連続的形式の可能性
(3)教育的概念としての覚醒
5 公共性を支えるもの――アレント
(1)全体主義のあとで
(2)「公共的」(public)であるとはどのようなことか――「活動」(action)としての政治
(3)何が公共性を支えるのか――「思考」(thinking)の孤独がもつ意義
人名索引
事項索引
藤井 千春[フジイ チハル]
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内容説明
いまに伝わる西洋の教育思想は、当時の政治的・経済的・文化的な状況とその展開との関わりの中で、どのような人間観に基づき生まれ、どのように論じられ、どのように実践されてきたのか。それぞれの時代に生きた教育思想家が、当時の社会状況の中で、何に悩み、どのように闘争し、思想を生み出してきたのか、その人間像を描きながら、教育思想の源泉を探るとともに今日的意義について考える。
目次
第1章 古代・中世の教育論―西洋の教育的理想の源流
第2章 ルネサンス・宗教改革期の教育論―「近代西洋」の人間観の発生
第3章 啓蒙主義と教育論―近代的個人の教育可能性
第4章 近代教育学の成立とその論理―すべての子どもに対する教育方法
第5章 近代公教育制度と教育論―学校教育の制度化
第6章 新教育運動と教育論―近代学校教育の修正要求
第7章 現代の教育思想の潮流―「近代西洋」の教育論の超克の試み
著者等紹介
藤井千春[フジイチハル]
1958年生まれ。現在、早稲田大学教育・総合科学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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