出版社内容情報
日本で独自の発展を遂げた文化経済学の歩みをレビューし、研究の概要を把握できるようまとめた本書は、文化経済学会〈日本〉が2012年に20周年を迎えたことを記念し、日本で独自の発展を遂げた文化経済学の歩みをレビューし、研究の概要を把握できるようにしたものである。文化経済、文化政策、コンテンツ産業、財政学など関連分野の研究や、実務で文化政策に関わる際にも役立つ一冊である。
はじめに??文化経済学の発展を振り返る
第?部 文化経済学の基本的課題
第1章 参加・鑑賞(勝浦正樹・有馬昌宏)
1 文化経済学における参加・鑑賞に関する研究の位置づけ
2 参加・鑑賞に関する先行研究
3 参加・鑑賞に関するデータ
4 参加・鑑賞に影響を与える要因
第2章 需要・選好(阪本 崇)
1 芸術・文化の需要と選好の変化
2 家計生産モデルと時間の費用
3 選好の変化と学習効果
4 政策論的含意
第3章 芸術家とクリエイターの労働市場(八木 匡)
1 コンテンツ産業の重要性
2 芸術家の労働市場の特徴
3 芸術家の収入源
4 家元制度における所得源泉と舞台の質
5 コンテンツ産業集積都市の労働市場
6 コンテンツ産業の発展に向けて
第4章 文化の財政(片山泰輔)
1 文化の財政を分析する視点
2 ヨーロッパ
3 アメリカ
4 今後の課題
第5章 芸術・文化への税制による支援(後藤和子)
1 見落されてきた文化税制
2 文化へのタックス・インセンティブ研究
3 税制による文化支援の類型
4 日本での展望
第?部 文化芸術分野
第6章 舞台芸術と劇場(清水裕之)
1 『文化経済学』における舞台芸術と劇場関連研究の抽出
2 舞台芸術と劇場関連研究の包括的な傾向
3 舞台芸術施設(劇場等)の研究動向
4 これからの研究課題と展望
第7章 ミュージアム(佐々木亨)
1 対象範囲と視点
2 博物館政策・法令の動向
3 ミュージアムが持つ多様な価値
4 深化する経営手法
5 ミュージアムと社会との係わり
第8章 伝統芸能(山田太門・高島知佐子)
1 日本伝統芸能の独自性
2 日本伝統芸能の継承の仕組み
3 日本の伝統芸能の課題
第9章 伝統工芸(高島知佐子・山田太門)
1 日本の伝統工芸の意義
2 日本の伝統工芸の現状
3 日本の伝統工芸と文化経済学
第10章 文化遺産・遺跡(澤村 明)
1 文化遺産の定義
2 国際的な研究動向と日本の研究概要
3 日本の文化遺産研究論文
4 文化遺産の保全に向けて
第11章 アートプロジェクト(熊倉純子・長津結一郎)
1 アートプロジェクトと文化経済学
2 アートとソーシャル・キャピタル
3 芸術論からの批判と民俗学的アプローチ
4 アートプロジェクトと批評
第12章 現代美術(加須屋明子)
1 美術をめぐる状況
2 芸術家の現状と支援策
3 芸術作品の評価と価値
4 アートマーケット、地域のアートプロジェクト
5 問題点と展望
第13章 クリエイティブ産業(後藤和子・増渕敏之)
1 クリエイティブ産業とは何か
2 クリエイティブ産業の理論
3 クリエイティブ産業に関する日本の研究
4 クリエイティブ産業に関するその他の領域の研究
5 今後の研究に期待されるもの
第?部 都市・地域への展開
第14章 創造都市(佐々木雅幸)
1 創造経済時代の都市
2 創造都市論の台頭
3 創造都市論の系譜と「創造の場」
4 今後の課題
第15章 まちづくり(勝又晃衣・勝又英明)
1 文化とまちづくりとは
2 調査方法の動向
3 文化資源の動向
4 経済分析の動向
5 「コミュニティ・市民グループ・NPO」の動向
6 今後の課題
第16章 観光と地域文化(井口 貢)
1 観光の研究を志向する若い人たちのために
2 地域観光のディレンマ
3 コンテンツ・ツーリズムとクールジャパン
4 日本人による日本のための真の観光学のために
第?部 支援・政策・運営
第17章 文化政策・文化行政(小林真理)
1 文化経済学と文化政策の実践
2 地方自治体における文化行政論の展開と実務上の混乱
3 公共政策としての文化政策
第18章 企業メセナ(河島伸子)
1 企業メセナの概観
2 企業メセナの勃興と発展
3 2000年代以降の発展
4 企業メセナに関する研究蓄積
5 今後の課題??企業メセナと文化経済学
第19章 アートマネジメント(伊藤裕夫)
1 文化経済学とアートマネジメント
2 啓蒙期における研究の振り返り
3 アートマネジメント「学」の試み
4 今後の課題??アートマネジメント「研究」に向けて
第20章 人材育成(新藤浩伸)
1 「人材育成」研究の背景と目的
2 「人材育成」のレトリック
3 文化経済学における「人材育成」研究の蓄積
4 課題と展望
第21章 アウトリーチ(吉本光宏)
1 アウトリーチ研究と一般財団法人地域創造の取り組み
2 文化施設運営とアウトリーチ
3 アートと教育をつなぐNPO
4 アウトリーチの教育的な効果
5 芸術の社会的な価値を拡張したアウトリーチ
第?部 多様な学術分野との連携
第22章 社会学からのアプローチ(友岡邦之)
1 文化経済学と社会学の関係
2 文化の供給/需要構造
3 文化の社会的価値
4 文化の政治的価値
第23章 経済思想史からのアプローチ(木村雄一)
1 文化経済学における経済思想史の研究動向
2 文化経済学の巨人たちの研究
3 文化経済学における経済思想研究の意義
第24章 美学・芸術学からのアプローチ(美山良夫)
1 美学・芸術学の立場
2 美学・芸術学とアート・マネジメント??慶應義塾における位置づけ
3 芸術研究、芸術史における学術的「危機」の顕在化
4 アート・マネジメント講座と芸術学、芸術史学研究における「再接合」
5 美学・芸術学の「危機」と文化経済学
索 引
文化経済学会〈日本〉[ブンカケイザイガッカイニホン]
内容説明
日本における独自の展開を概観する。わが国の文化経済学研究はいかなる発展を遂げてきたか。多彩な学術アプローチと重要なトピックの論点を整理する。
目次
第1部 文化経済学の基本的課題(参加・鑑賞;需要・選好 ほか)
第2部 文化芸術分野(舞台芸術と劇場;ミュージアム ほか)
第3部 都市・地域への展開(創造都市;まちづくり ほか)
第4部 支援・政策・運営(文化政策・文化行政;企業メセナ ほか)
第5部 多様な学術分野との連携(社会学からのアプローチ;経済思想史からのアプローチ ほか)