出版社内容情報
投資家、NPO、政府が連携し、各々のメリットを活かして社会的課題の解決をめざす投資のスキームがついに登場。様々な取り組むべき社会的課題が存在する今日、その解決には、時として政府の財政支出のみに頼るよりも、民間投資家の資金をインパクト志向の高いNPO等の社会サービスに投資した方が効果的なこともある。本書は、そのための新たな手法であるソーシャルインパクト・ボンド(SIB)を本格的に解説するものである。投資が成功して課題が改善された場合、投資家へのリターン(成功報酬)を政府が負担するという新たなメカニズムについて、世界各地での動向を解説、その可能性と課題に迫る。
はしがき
序 章 ソーシャルインパクト・ボンドの社会的意義(塚本一郎)
1 なぜソーシャルインパクト・ボンドに注目するのか
2 社会的インパクトへの投資と公共サービス・イノベーション
3 本書の構成
第?部 インパクトインベストメントとしてのソーシャルインパクト・ボンド
第1章 社会貢献債券とインパクトインベストメント(関 正雄)
1 インパクトインベストメントの認知と加速(G8フォーラム)
2 サステナブル投資とインパクトインベストメント
3 具体的商品としての社会貢献債券
4 SDGs採択を機に、スケールアップが期待される社会貢献債券
5 社会貢献債券の課題と展望
第2章 ソーシャルインパクト・ボンドとは何か(塚本一郎・西村万里子)
1 ソーシャルインパクト・ボンドへの期待の背景
2 SIBの性格
3 SIBの基本枠組みと多様性
4 SIBの事例――T&Tイノベーション・プログラム
5 考察――パフォーマンス・マネジメントの重要性
第3章 PFIとソーシャルインパクト・ボンド(高木麻美)
1 広義のPPPにおけるPFIとSIB
2 PFIとの比較におけるSIBの特徴
3 PFIにおける課題とSIB実施にあたっての示唆
第?部 SIBの世界的動向
第4章 ソーシャルインパクト・ボンド推進における政府・中間支援組織・投資家の役割(金子郁容)
1 SIBのステークホールダー
2 それぞれのステークホールダーの観点とモチベーション
3 英国政府SIB担当Kieron Boyle氏による説得力のある分析
4 世界的投資会社による社会的インパクト投資
5 サービスプロバイダーから見た社会的投資の現場――St. Mungo’s Broadway
6 SIBの経験豊かなコンサルティングの立場からの意見――OPM
7 ファイナンスによってソーシャルインパクトをもたらす既存組織
第5章 ロンドン・ホームレスSIBプロジェクト(吉岡貴之)
1 本章の構成
2 ロンドンのホームレス問題とホームレス支援サービス
3 SIBを活用した新たなホームレス支援サービスの開発
4 SIB活用した新たなホームレス支援サービスの委託
5 ストリートインパクト及びテムズリーチエース・プロジェクトの進捗状況
6 SMBに対するインタビュー調査により得られた知見
7 ロンドン・ホームレスSIBプロジェクトからの教訓
第6章 医療・健康分野におけるSIBプロジェクト――Ways to Wellnessの事例から(遠藤知子)
1 キャメロン政権による公共サービス政策の背景とNHS改革
2 健康と医療における予防的介入
3 Ways to Wellness SIB
4 健康格差と自己責任
第7章 ニューヨーク市ライカーズ島SIBの事例(森 利博)
1 ライカーズ島SIBプロジェクト導入の背景
2 プロジェクト参加者
3 アウトカムの評価
4 プロジェクトの評価と今後の展望
第8章 ユタ州プリスクールサービスSIBプロジェクト(吉岡貴之)
1 本章の構成
2 ユタ州における早期幼児教育問題とプリスクールプログラムへの取り組み
3 グラニット学校区プリスクールプログラムに関する長期的調査
4 SIBを活用したユタ州プリスクールサービス・プロジェクトの開発
5 プリスクールサービスSIBプロジェクトの進捗状況
6 ユタ州プリスクールサービスSIBプロジェクトからの教訓
第9章 ニューヨーク州雇用促進・再犯防止SIBプロジェクト(吉岡貴之)
1 本章の構成
2 ニューヨーク州における再犯問題とワーク・フォー・サクセス・イニシアチブ
3 SIBを活用した雇用促進・再犯防止プロジェクトの開発
4 雇用促進・再犯防止SIBプロジェクトのアウトカム指標と支払い額の設定
5 無作為化比較試験を用いたアウトカム測定と評価、検証
6 アメリカとイギリスのSIBで用いられる評価手法の違い
第?部 SIB導入に向けた課題
第10章 SIB推進におけるNPO・社会的企業の可能性と課題(今村 肇)
1 SIBをきっかけにNPO・社会的企業とそれをとりまく環境のあり方を見直す
2 SIBの登場がNPO・社会的企業にもたらす評価のインパクト
3 アメリカの文脈におけるSIBとNPO・社会的企業
4 NPO・社会的企業をめぐる国家による文脈の違いと日本への適用可能性
第11章 ソーシャルインパクト・ボンドにおけるインパクト評価(馬場英朗)
1 インパクト評価への関心の高まり
2 インパクト評価の標準化への試み
3 SIBのインパクト評価
4 インパクト評価の可能性と課題
事例編
1 英国内閣府SIBセンター/英国内閣府社会的投資・金融チーム(吉岡貴之)
2 ビッグソサエティ・キャピタル(関 正雄)
3 ブリッジズ・ベンチャーズ(森 利博)
4 イッツ・オール・アバウト・ミー(吉岡貴之)
5 ハーバード大学ケネディスクール・ガバメントパフォーマンスラボ(吉岡貴之)
索 引
塚本 一郎[ツカモト イチロウ]
2016年11月現在明治大学経営学部教授。
金子 郁容[カネコ イクヨウ]
2016年11月現在現在,明治大学経営学部特任講師,慶應義塾大学名誉教授
内容説明
社会課題を解決する投資の新たなかたち。投資家、NPO、政府が連携し、各々のメリットを活かして社会的課題の解決をめざす投資のスキームがついに登場。投資が成功して課題が改善された場合、投資家へのリターン(成功報酬)を政府が負担するという新たなメカニズムについて、世界各地での動向を解説、その可能性と課題に迫る。
目次
ソーシャルインパクト・ボンドの社会的意義
第1部 インパクトインベストメントとしてのソーシャルインパクト・ボンド(社会貢献債券とインパクトインベストメント;ソーシャルインパクト・ボンドとは何か;PFIとソーシャルインパクト・ボンド)
第2部 SIBの世界的動向(ソーシャルインパクト・ボンド推進における政府・中間支援組織・投資家の役割;ロンドン・ホームレスSIBプロジェクト;医療・健康分野におけるSIBプロジェクト―Ways to Wellnessの事例から;ニューヨーク市ライカーズ島SIBの事例;ユタ州プリスクールサービスSIBプロジェクト;ニューヨーク州雇用促進・再犯防止SIBプロジェクト)
第3部 SIB導入に向けた課題(SIB推進におけるNPO・社会的企業の可能性と課題;ソーシャルインパクト・ボンドにおけるインパクト評価)
事例編(英国内閣府SIBセンター/英国内閣府社会的投資・金融チーム;ビッグソサエティ・キャピタル;ブリッジズ・ベンチャーズ;イッツ・オール・アバウト・ミー;ハーバード大学ケネディスクール・ガバメントパフォーマンスラボ)
著者等紹介
塚本一郎[ツカモトイチロウ]
一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。佐賀大学経済学部助教授等を経て、明治大学経営学部教授
金子郁容[カネコイクヨウ]
スタンフォード大学Ph.D.、ウィスコンシン大学計算機学科准教授、一橋大学商学部教授、慶應義塾大学総合政策学部教授等を経て、明治大学経営学部特任講師、慶應義塾大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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