内容説明
本書は、不正義の視点を通して、福祉国家の忘れものを問う。その福祉国家の忘れものから、法律、社会保障制度そして、個人などにまつわる現代正義論を俯瞰する。ロールズの「無知のヴェール」を乗り越え、センのいう社会的選択と不偏性による「ケイパビリティ・アプローチ」によって捕捉する試みである。
目次
福祉国家の忘れもの―契機と敬意
正義の不穏
家族の法と個人の保護
不利な立場の人々の人権
住所・住民登録・居住
自尊の理念
差別・貧困と障害者の権利
人権としての生存と自立
社会保険制度の効率と公平
借りて生きる福祉の構想
フリーライディングする福祉制度?
死刑制度と正義
運の平等と個人の責任
いかにして未来の他者と連帯するのか?
著者等紹介
後藤玲子[ゴトウレイコ]
1958年生まれ。現在、一橋大学経済研究所教授(経済哲学専攻)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
32
後藤玲子教授によると、ロールズのリベラルな平等とは、等しい存在に対する等しい扱い、形式的な平等を指す。また、民主的な平等とは、差異ある存在に対する実質的に平等な扱いをいう(3頁上段)。秋元美世教授によると、生存権は社会権の一部で、市民的権利(市民権)よりも新しい、福祉国家を前提とした権利(17頁上段)。長谷川晃教授によると、アマルティア・センの潜在能力論で、自尊は誰もが有すると想定できない。一定の潜在能力が備わることが重要という(78頁上段)。センの考えでは、社会的優先財は個人の生活の単なる手段。2016/08/14