内容説明
コミュニティのソーシャルネットワークを復興資源として捉え、その影響を考察した一冊。
目次
第1章 ソーシャル・キャピタル―災害後の復興におけるその役割
第2章 ソーシャル・キャピタル―二面性を持つ復興資源
第3章 関東大震災(1923年)
第4章 阪神・淡路大震災(1995年)
第5章 インド洋大津波(2004年)
第6章 ハリケーン・カトリーナ(2005年)
第7章 国家と市場の狭間で―進むべき方向性
著者等紹介
石田祐[イシダユウ]
1978年生まれ。2007年大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程単位修得退学。博士(国際公共政策)。現在、国立高等専門学校機構明石工業高等専門学校准教授
藤澤由和[フジサワヨシカズ]
1968年生まれ。2005年早稲田大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程単位取得後退学。現在、静岡県立大学経営情報イノベーション研究科公共政策系准教授、東京医科大学医療安全管理学講座客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヨハネス・フェーリクス
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災害復興におけるソーシャル・キャピタルの役割に関し、さまざまな側面から分析・考察した書です。災害復興の際の「ご近所の結束力」は、一般に発災時からその後数年間に渡って幅広く取り上げられていますが、本書ではソーシャル・キャピタルが持つ負の側面にも光が当てられている点が重要だと考えます。復興にあたって住民同士の関係維持を考慮することは不可欠ですが、マイノリティの人々にとってソーシャル・キャピタルが復興の妨げになりうるという視点もまた、復興政策立案の上で欠かせないものでありましょう。2017/11/22
Moloko
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災害からの復興において、ソーシャル・キャピタルがその地域の人口の回復や家屋の再建・修繕や共同体から疎外された人々の苦境にどこまで影響力があるかを、社会経済的要因や貧富の格差や所得や震災のダメージの大きさ等の別の因子をコントロールした上で統計的に実証した。印象的だったのは結束が強固な共同体が周縁に置かれた人々への援助を遮断する、あるいは震災対応に必要なNIMBY施設を他へ押し付ける等の負の側面を示したことと、くじ引きによる仮設住宅の割振りと孤独死のような社会の人的つながりを無視した政策の愚かさを示したこと。2016/12/26
かもろうる
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災害復興という観点からソーシャルキャピタルの影響を、定量的分析等を活用してその役割とは何かを示した著書。これまで、災害復興とは単に水や食料、インフラ整備等の私たちの生活に欠かせないもの(物的支援)を支えることが最重要科目として支援をしてきていた。しかし、それだけで災害被害を受けた地域は再生されうるのかという観点から、日本では関東大震災や阪神・淡路大震災、海外ではインド洋大津波、ハリケーン・トスカーナを例に挙げ、ソーシャルキャピタルというワードを含めて改めて検証されている。2016/12/05