出版社内容情報
地域から見た世界史の接続と不接続、過去の一地点から見渡す世界、時系列と同時代が織りなす新しい時空間を俯瞰する。時系列に沿って読み解く縦の歴史、同時代の地域を結んで読み解く横の歴史。本書は、これまで分析の主体となって来た「国」や「地域」の概念を改めて批判的に精査し、縦糸と横糸の織りなす時空間によって、我々に新しい歴史の景色を提示するグローバル・ヒストリーの試みである。
序 章 地域史と世界史(羽田 正)
1 歴史研究と時空間
2 一国史や地域史と新しい世界史
3 新しい世界史という織物
第?部 地域史と世界史の接続・不接続
第1章 古琉球から世界史へ(村井章介)
??琉球はどこまで「日本」か
1 「日本」史と地域史
2 古琉球史の射程
3 古琉球に関する文字史料
第2章 東アジア(貴志俊彦)
??相関する地域・交錯する地域像
1 「東アジア」という地域像
2 日本における東アジア地域認識の推移
3 「東アジア」アイデンティティと中国・韓国
4 21世紀の東アジア論へ向けて
第3章 イスラーム世界(羽田 正)
??歴史を語る空間概念枠組みの功罪
1 「イスラーム世界」という概念の成立とその日本語への導入
2 イスラーム世界史研究の歴史
3 「イスラーム世界」と世界史の関係
第4章 インド洋(鈴木英明)
??海から新しい世界史は語りうるのか
1 海への注目と可能性
2 歴史叙述の舞台としてのインド洋海域の成り立ち
3 インド洋海域史研究からのレッスン
4 海から世界史は語りうるのか
第5章 中央ユーラシア世界(杉山清彦)
??方法から地域へ
1 方法としての「中央ユーラシア」
2 実体としての中央ユーラシア
3 「中央ユーラシア」をどう定義するか
4 中央ユーラシア世界と世界史
5 中央ユーラシアの「周縁化」と「実体化」
第6章 ラテンアメリカ(高橋 均)
??20世紀を通じての自己診断の変遷と後進性の過剰演出
1 20世紀ラテンアメリカの自己診断における「後進性」の過剰演出
2 個人的な体験??アフリカの某国某市のバスターミナルにて
3 最貧国の近現代史モデルの構想
4 中進国ラテンアメリカにおける後進性の過剰演出の根源は何か
第?部 都市から眺めた1870年の世界
第7章 1872~73年の那覇(渡辺美季)
??イギリス船ベナレス号の遭難事件から見た「世界」
1 宜名真のオランダ墓
2 近世琉球の「世界」
3 琉球史料から見た遭難事件
4 イギリス史料から見た遭難事件
5 事後の経緯と明治政府
6 那覇の変化
第8章 上海から見た1870~74年の「世界」(古田和子)
??財政とアヘン
1 分析の課題と視角
2 貿易の概観と実態経済
3 寒防・海防をめぐる財政の綱引きと上海の商人
4 アヘン市場をめぐる綱引き
5 上海と「その他の世界」
第9章 スラバヤ(大橋厚子)
??海軍・砂糖輸出・機械工業の都市
1 19世紀の国際関係とスラバヤの発展
2 1870年頃のスラバヤの概観
3 造船所・機械廠・優秀な工場労働者
4 優秀な土着の職人たち
5 郊外の砂糖農園
6 グローバルなシステムのなかのスラバヤ
第10章 ボンベイ(井坂理穂)
??エリート層から見た「世界」
1 イギリスの植民地支配とボンベイ
2 ボンベイのエリート層の諸活動
3 出版物、結社を通じてつながる世界
第11章 モスクワ(森永貴子)
??1872年科学技術博覧会への眼差し
1 1870年前後のモスクワ
2 協会設立ブームと愛国主義の動き
3 科学技術博覧会とその反響
第12章 サンフランシスコ(貴堂嘉之)
??西部開拓・帝国都市・近代
1 世界とつながる
2 サンフランシスコの都市開発と人種・民族交錯史
第13章 アレクサンドリア(加藤 博)
??文明の交差する地中海近代都市
1 中心と周縁のネクサス
2 副王イスマイールのエジプト
3 国際博覧会文化とイスラーム世界
4 世界経済とエジプト
5 近代アレクサンドリア
6 問われている近代
人名・事項索引
羽田 正[ハネダ マサシ]
2016年10月現在 東京大学理事・副学長。東洋文化研究所教授。
内容説明
グローバル・ヒストリーの縦糸と横糸。地域から見た世界史の接続と不接続、過去の一地点から見渡す世界、時系列と同時代が織りなす新しい時空間を俯瞰する。
目次
地域史と世界史
第1部 地域史と世界史の接続・不接続(古琉球から世界史へ―琉球はどこまで「日本」か;東アジア―相関する地域・交錯する地域像;イスラーム世界―歴史を語る空間概念枠組みの功罪;インド洋―海から新しい世界史は語りうるのか;中央ユーラシア世界―方法から地域へ;ラテンアメリカ―二〇世紀を通じての自己診断の変遷と後進性の過剰演出)
第2部 都市から眺めた一八七〇年の世界(一八七二~七三年の那覇―イギリス船ベナレス号の遭難事件から見た「世界」;上海から見た一八七〇~七四年の「世界」―財政とアヘン;スラバヤ―海軍・砂糖輸出・機械工業の都市;ボンベイ―エリート層から見た「世界」;モスクワ―一八七二年科学技術博覧会への眼差し;サンフランシスコ―西部開拓・帝国都市・近代;アレクサンドリア―文明の交差する地中海近代都市)
著者等紹介
羽田正[ハネダマサシ]
1953年生まれ。1983年Ph.D.(パリ第3大学)。現在、東京大学理事・副学長。東洋文化研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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