出版社内容情報
社会的・経済的環境が及ぼす健康に影響とは。社会や環境を対象とした対策に基づく、「健康なコミュニティ」構築のためのケアを検討。本書は、ソーシャル・キャピタルをキー概念として、社会疫学・社会政策学等の成果を踏まえてケアと健康の関係性を考察したものである。身体的・精神的要因だけでなく人間を取り巻く社会的・経済的環境も、健康の重要な決定要因であるという考えに基づき、健康格差の拡大を予防し「健康なコミュニティ」の構築を可能にするケアのあり方を、愛知県武豊町の地域サロン事業、秋田県の自殺対策等の具体的な事例を基に提言した一冊。
「講座ケア」刊行にあたって
はしがき
序 章 ケアと健康の関係を考える(近藤克則)
――新たなケアと健康観の確立に向けて
1 健康の捉え方をめぐる動向
2 健康の社会的決定要因をめぐる動向
3 ケア関係の深さ・広がり・多様性
4 ケア関係のモデル
5 新たなケアと健康観の確立に向けて
第?部 健康に影響する社会的・環境的・遺伝的要因
第1章 社会疫学とは何か(福田吉治)
――健康の社会的決定要因と健康格差の研究
1 社会疫学とは
2 社会疫学が注目される背景と歴史
3 社会疫学で扱う領域
4 社会疫学研究の具体例
5 社会疫学の成果還元と今後
第2章 ソーシャルサポートと健康(村田千代栄)
1 社会関係と健康
2 ソーシャルサポート研究
3 ソーシャルサポートと健康をつなぐメカニズム
4 ケアにおけるソーシャルサポートの可能性
第3章 近隣環境と健康(埴淵知哉)
1 健康と場所のつながり
2 近隣の食環境
3 近隣の身体活動環境
4 近隣の建造環境とソーシャル・キャピタル
5 近隣環境の測定をめぐる現状と課題
6 日本を対象とした近隣環境研究に向けて
第4章 疾病の遺伝要因(羽田 明)
1 遺伝性疾患とは
2 多因子疾患の遺伝要因
3 ゲノム医学研究の急速な進展
4 研究成果応用の現状
5 現在,ヒトゲノム研究で行われていること
6 個別化医療時代
7 遺伝子研究の進展がもたらす医療・公衆衛生のパラダイム変化
第?部 ソーシャル・キャピタルと健康
第5章 健康の社会的決定要因としてのソーシャル・キャピタル(相田 潤・近藤克則)
――その作用機序と実証の方法
1 ソーシャル・キャピタルはどのように健康に影響を与えるのか
2 ソーシャル・キャピタルと健康の疫学研究
3 ソーシャル・キャピタルと健康の研究課題
第6章 ソーシャル・キャピタルと自殺予防(本橋 豊・金子善博・藤田幸司)
――コミュニティ・アプローチへの応用
1 日本の自殺の現状と自殺対策基本法成立まで
2 地域のつながりを重視した自殺対策――秋田県の事例から
3 地域におけるソーシャル・キャピタルと自殺予防
4 自殺対策におけるソーシャル・キャピタルの重要性
第7章 ソーシャル・キャピタルと介護予防(平井 寛)
――武豊町における地域介入研究の事例から
1 介入事業の背景
2 武豊町における介入事業
3 介入事業の成果
4 武豊町地域サロン事業が一定の成果を挙げた要因
5 地域のソーシャル・キャピタルを意識した介入の可能性と意義
第?部 社会的レベルのケアに関わる要因と政策
第8章 予防医学におけるハイリスク戦略とポピュレーション戦略(尾島俊之)
1 ハイリスク戦略・ポピュレーション戦略とは
2 ヘルスプロモーション
3 ポピュレーション戦略の類型と具体例
4 アセット・モデル
5 ポピュレーション戦略とハイリスク戦略の効果的な統合
第9章 社会的排除・?奪とライフコース(斉藤雅茂)
1 健康の規定要因としての貧困やライフコース
2 ライフコース疫学による主な知見
3 過去の社会経済的不利が健康に及ぼす経路
4 社会的排除や相対的?奪という概念の示唆
5 ライフコース研究の蓄積と新たなケア観の確立に向けて
第10章 相対所得仮説からみた格差と不健康(近藤尚己)
1 相対所得仮説とは
2 相対所得仮説はどこまで検証されたか
第11章 福祉国家におけるケア供給の意義(松田亮三)
――医療の健康への寄与を中心に
1 福祉国家における医療――その成果検討の要請
2 健康規定要因の一つとしての医療
3 人々の健康への医療の効果を定量化する試み
4 医療の集合的効果――継続する問い
第12章 健康影響評価(HIA)(藤野善久)
1 健康影響評価
2 健康の社会環境モデル
3 社会環境モデルによる健康配慮のアプローチ
4 健康格差とHIA
5 Health in All Policiesとガバナンス
第?部 ケアにおける“多対多モデル”
第13章 ケアにおける“多対多モデル”の分類と方法・方策(野中 猛)
1 なぜ“多対多モデル”なのか
2 ケアにおける“多対多モデル”の分類
3 ケアにおける“多対多モデル”の方法
4 ケアにおける“多対多モデル”の成果
5 “多対多モデル”のための人材養成
6 “多対多モデル”を実現するための方策
第14章 地域資源をつなぎ開発するケアマネジメント(樋口京子)
1 “多対多モデル”のケアの方法論としてのケアマネジメント
2 “多対多モデル”のケアの質の評価とケアマネジメント
3 “多対多モデル”におけるケアマネジメントの地域資源へのアプローチ
索 引
近藤 克則[コンドウ カツノリ]
2016年8月現在千葉大学予防医学センター教授。国立長寿医療研究センター老年学評価研究部長
内容説明
本書は、ソーシャル・キャピタルをキー概念として、社会疫学・社会政策学等の成果を踏まえてケアと健康の関係性を考察したものである。身体的・精神的要因だけでなく人間を取り巻く社会的・経済的環境も、健康の重要な決定要因であるという考えに基づき、健康格差の拡大を予防し「健康なコミュニティ」の構築を可能にするケアのあり方を、愛知県武豊町の地域サロン事業、秋田県の自殺対策等の具体的な事例を基に提言した一冊。
目次
ケアと健康の関係を考える―新たなケアと健康観の確立に向けて
第1部 健康に影響する社会的・環境的・遺伝的要因(社会疫学とは何か―健康の社会的決定要因と健康格差の研究;ソーシャルサポートと健康 ほか)
第2部 ソーシャル・キャピタルと健康(健康の社会的決定要因としてのソーシャル・キャピタル―その作用機序と実証の方法;ソーシャル・キャピタルと自殺予防―コミュニティ・アプローチへの応用 ほか)
第3部 社会的レベルのケアに関わる要因と政策(予防医学におけるハイリスク戦略とポピュレーション戦略;社会的排除・剥奪とライフコース ほか)
第4部 ケアにおける“多対多モデル”(ケアにおける“多対多モデル”の分類と方法・方策;地域資源をつなぎ開発するケアマネジメント)
著者等紹介
近藤克則[コンドウカツノリ]
1958年生まれ。1983年千葉大学医学部卒業。博士(医学・社会福祉学)。現在、千葉大学予防医学センター教授。国立長寿医療研究センター老年学評価研究部長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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