内容説明
「情報待ち」「行政・専門家依存」はなぜ起こるのか?長年の研究成果と最新の知見を元に、東日本大震災を経た今だからこそ求められる革新的な災害情報像を、大胆かつ体系的に提起。災害情報がもたらす逆説的な効果(「リスク・コミュニケーションのパラドックス」)について精細に概念化し、それを踏まえて、真に有効で実践的な災害情報の生産・発信・共有を試みる。
目次
第1部 災害情報の理論(災害情報のダブル・バインド;参加を促す災害情報―マニュアル・マップ・正統的周辺参加;「安全・安心」と災害情報―「天災は安心した頃にやって来る」)
第2部 事例に見る災害情報(「津波てんでんこ」の4つの意味―重層的な災害情報;「自然と社会」を分ける災害情報―神戸市都賀川災害;みんなで作る災害情報―「満点計画学習プログラム」)
第3部 災害情報の多様性(「あのとき」を伝える災害情報―生活習慣・痕跡・モニュメント・博物館;小説と災害―“選択”と“宿命”をめぐって;テレビの中の防災―「一代の英雄」/「地上の星」/「ストイックな交歓者」)
著者等紹介
矢守克也[ヤモリカツヤ]
大阪大学大学院人間科学研究科博士課程単位取得退学、博士(人間科学)。現在、京都大学防災研究所・巨大災害研究センター教授。同上阿武山観測所教授、同上大学院情報学研究科教授、人と防災未来センター上級研究員などを兼任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tolucky1962
3
たとえば今週の伊豆大島で避難勧告が出なかった事例など どのような構造的問題があるかよくわかります。2013/10/18
Go Extreme
1
リスク・コミュニケーションのパラドックス 情報待ち 行政・専門家依存 情報があることで早期避難が遅れる逆説 メッセージとメタ・メッセージの矛盾 ダブル・バインド 人びとの行動を災害情報として機能 マニュアルの可視化と不可視化 防災実践への巻き込み 安心追求が不安の温床 選択がもたらす不幸 気遣いの外化 天災は忘れた頃に ポスト近代的関係性 無被害の場所が痕跡となる逆説 宿命から選択へ 当事者として共に悩む営為 巨大想定による諦めムード 英雄の治世としての防災 ストイックな交歓者の追求2025/05/01
NORI
0
防災において「情報待ち」や「行政・専門家依存」の問題がなぜ起こるかを論理的に分かりやすく考察した上で、それらを克服するための事例や考え方を示している。堤防や防潮堤などの防災施設は「危険な自然」と「安全な社会」を空間的に、警報や避難指示のような災害情報は時間的に分けるものとし、それらは決して完全ではないにも関わらず、防災施設に守られている場所は安全で、警報や避難指示が出ていない時は安全だという、防災上逆効果ともなり得るメタ・メッセージを併せ持つ、本質的に矛盾や葛藤を内包するものだとする指摘がとても興味深い。2014/06/19