内容説明
福田恆存(一九一二~九四)、昭和期の評論家・劇作家・演出家。戦後日本を代表する保守派の論客として、新劇の劇作家・演出家として、翻訳家として、多岐にわたり活躍した福田恆存。彼が展開した演戯論・平和論・恋愛論・国語論はいかにして形成されたのか。その生涯と思想を追う。
目次
第1章 生い立ち―福田の原風景
第2章 坊っちゃん―戦前・戦中の福田
第3章 文壇へ―敗戦後の福田
第4章 劇壇へ―戦後の福田(一)
第5章 論壇へ―戦後の福田(二)
終章 大いなる自然とともに
著者等紹介
川久保剛[カワクボツヨシ]
1974年福井県生まれ。1997年上智大学文学部哲学科卒業。専攻は日本思想史。現在、麗澤大学外国語学部准教授。同大学道徳科学教育センター研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zunzun
6
保守思想家として知られる福田恆存の初の評伝である。 福田の人生、業績を纏めた本はこれ以外ない。彼の思想を紹介、批評した本、あるいは息子である逸による父を回顧したものがあった。末っ子である父・幸四朗はサラリーマンでありながらも書道を嗜んでいた。仕事場の電力会社も「柱登り」という工夫を擁しており、今の会社勤めとは雰囲気が異なっていたとされる。他の兄弟はみな職人であった。母・まさの父親も職人先祖は石工職人だった。 福田は東京の下町に育ち、関東大震災前の江戸の面影が濃かった時代に成長した。 2024/06/24
Haruka Fukuhara
2
福田の人生を丹念に追っていて、面白みはないけれど興味深い本だった。2017/02/09
金北山の麓に生まれ育って
1
【貴重な評伝】この一冊しか通史での評伝は無いのです、この本がカバーしてくれる戦前までの福田の人生記録は大変有益でした。座談集7巻を演劇編だけ飛ばして読み通して情報過多でちょっと混乱していた私には戦中の福田の言動が無茶苦茶貴重な情報で、反戦派で戦争に乗っかかる思想家達を批判したとは、戦後にも一貫する福田恒存像がくっきりと掴む事が出来ました。意識的にゴシップ情報は取り上げてないのは立派ですがこれはこれで、大岡との対談でポロッと漏れかけたプロポーズとか初恋の話とか野暮ですが知りたいです(晩年の病気話は不要)。2022/06/12
ksk
1
福田恒存が重視していたのはバランス感覚だろう。 肉体と精神、現実と理想など。 右から左、左から右へと極端なジグザグコースを辿っていることに対して警鐘を鳴らしている。2021/05/05
マウンテンゴリラ
1
福田恆存という人物については、多くの保守論客から高い評価を受けていることで以前から名前だけは知っていたが、実際にその思想に接する機会がなく、いつかは読んでみたいと考えていた。今回、本書を手に取ることによって、評伝という形で福田恆存その人の全体像を見渡せたのは、とても良い機会であったと思う。人間の思想に絶対というものがあり得無い以上、その人の思想に信頼をおけるかどうかは、その人の人格に大きく依存しているように思える。→(2)2014/05/19