内容説明
本書は、ルース・ベネディクトの『菊と刀』にも影響を与えたジェフリー・ゴーラーの日本人論。ゴーラーは、日本にかんする綿密な聞き取り調査と文献研究を通して、日本人の性格構造に関するレポートを書いた。そのレポートが及ぼした影響範囲は思いのほか大きく、アメリカの戦時情報局でも対日戦におけるプロパガンダに重要な資料とされた。これまで表に出されることがなかったそのレポートを今回オープンにし、翻訳、解説することで、彼の残した日本人論に新たな光をあてる。
目次
日本人の性格構造とプロパガンダ(日本人の性格形成;日本人を侵略戦争に駆り立てた理由;プロパガンダと日本人)
日本文化におけるいくつかのテーマ
極端な事例 日本(日本の敗北;最小限の実行事例―侵略的要素の排除;侵略を助長する組織;民主主義の基礎となる日本の村)
ジャップはなぜジャップなのか
訳者解説ジェフリー・ゴーラーの日本人論(ジェフリー・ゴーラーの生い立ち;日本人の性格構造とプロパガンダ;日本文化におけるいくつかのテーマ;戦時情報局;極端な事例 日本;太平洋問題調査会―ニューヨーク会議)
著者等紹介
福井七子[フクイナナコ]
関西大学を卒業後、シドニー大学大学院を経て、博士(文学)(関西大学)。現在、関西大学外国語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
14
1942年、今まさに戦いつつある日本を英国の社会学者が分析した一冊。タイトルは「日本人の」ではなく「日本人に対する(効果的な)」プロパガンダの意である。流石はプロパガンダ先進国イギリスだ。また、日本に勝つだけでなく、勝った後で日本を統治する方法まで提言。勝つことが前提なのが何とも言えぬ…その内容も、「日本は相手が弱いと図に乗るから、子供に対する父親のように自信ある態度で接すると上手くいく」と身も蓋もない。2024/05/30
やまやま
10
敗者をどう統治して理解できるパートナーに変身させるかは熱戦後の長い期間の関係作りに大変重要な視点である。日本の戦意や戦後の統治に関して、米国は戦時情報局や太平洋問題調査会といった機関での議論を入念に行い、日本人の特質について議論を重ねていった。訳者の福井先生は、「菊と刀」における情景描写の細かさを不自然と思い、種本を求めていったところゴーラー氏にたどり着いた。更にゴーラー氏へのインフォーマントは、横浜共立学園の校長先生クララ・ルーミスさんであり、当時の様子を克明に記した新聞記事が出発点であった。 2020/02/19
自然堂
8
分析対象として当事者たる日本人の立場からすると冷や汗まみれになる様な恐ろしい本。日本人の内集団に関する意識の特徴とそれに準ずる責務体系、また全ての社会を男と女に分けそれに応じた振る舞いをするという日本人の価値基準の分析等、非常に的確に日本人を分析している。更に本書が恐ろしいのは、戦後のGHQの占領政策からその後の外交関係に至るまでが本書に基づいて行われたとしか思えず、またそれらを受けた日本側の社会、政治の在り方、民衆、知識人の反応等も全て本書で述べられている事をなぞるように進んでいる事だ。(コメ欄へ続く)2012/04/23
Ted
6
'11年4月刊。ルース・ベネディクト『菊と刀』にはネタ本があった。本書はその翻訳で著者は英国の社会学者。対日戦略のバイブルとも言われ、占領政策に反映されたのは間違いないのでもっと知られてよい人物。明らかに見当外れな部分もあるが、驚くのは、日本語を解せず来日さえしたことがないのに、ヒアリングと文献だけで日本人の精神構造を極めて精緻に分析している点である。今の我々にもそのまま当てはまる部分も多い。米国では抹消され閲覧不能だった対日プロパガンダの章まで網羅しているのは貴重。この辺りに対日戦略の肝が隠されている。2012/09/19
山田
2
戦時中の欧米から見た日本人像。 章の途中でそれまでの論旨をまとめてくれているのがありがたかった。 50年以上昔の日本人の特徴を述べているが、現代の様々な問題に合致する箇所がチラホラあった事が興味深かった。 時間があれば書かれている事の事実関係を調べてみようと思う。2014/01/16