内容説明
一九世紀半ばの創設以来、時代が抱える課題を引き受けて発展してきた社会学は、近代化や産業化、階級や社会変動による劇的な変化をうけて大きく変容している。本書は、社会を人々の「意味世界」として存在するものとし、社会学のあるべき姿を探究するとともに、社会とはいかなるものかを検討する。
目次
第1章 意味世界としての社会的世界
第2章 社会はいかにして可能か
第3章 秩序問題という問い
第4章 事実性と規範性
第5章 ミクロ‐マクロ生成論の試みと挫折
第6章 階級と権力の意味的秩序
第7章 社会システムは存在するか
第8章 経験主義と外的視点の限界
第9章 規範的社会理論への展望
第10章 共同性の学としての社会学
著者等紹介
盛山和夫[セイヤマカズオ]
1948年生まれ。1978年東京大学大学院社会学研究科社会学専攻博士課程退学、1996年博士(社会学)(東京大学)。現在、東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りょうみや
16
社会学のアイデンティティを掴むための著者の格闘ぶりが伝わってくる。理解のために社会学理論の知識がある程度いるので手強い内容。自分の言葉で書けば、社会学は単なる人間の生態学ではなく個人の頭の中で構築された「意味」を重視したい。研究者は単なる外部の観察者ではなく良い社会とはなにかというところまで踏み込みたいということになるだろうか。社会学とは何か?というのは読む本によって表現や印象がだいぶ変わる。社会学のとらえどころのなさを本を読むたびに実感する。2021/11/06
ぽん教授(非実在系)
3
意味世界が人々を規定しつつも人々は自律的にも動く。そんな中で各個人はバラバラに考えるがそれでも共同するための規範が必要である、という認識を提示したうえで著者は社会学のことを共同性の学であると定義する。そこに至るまでの考える道筋が非常に長く、結構難しい上に強引な議論展開も多々見受けられる。社会を外から眺めることの不可能性のため、世の中を斜に構えて見るというタイプの社会学にかなり批判的であり、ある種原点回帰的であるとも言える。結論が平凡で妥当なため、社会問題にうるさい系統の人にはあまり受けないかもしれない。2016/07/29
ふにゃ
2
社会学とは、「人々の意味世界を探求する学」であり、「共同性についての学」であり、「規範的な学」である。/社会学がもたらす知見は「仮説」に過ぎないと考えればいいのではないか。デュルケムの「社会的事実」というのは、仮に置かれたもの。「仮に置かれたもの」をその学者の主張と取り違えてはならない。/こうした著者の主張のもとに、今までの理論が整理され、場合によっては批判される。勉強になりました。2013/07/03
なーちゃま
1
意味論的社会学の分かりやすい書籍。これまで学んできた社会学理論やパースペクティブを参照し、論破し、賛成しながら社会を『人々が意味付けた主観的世界の集合』と捉えて諸現象を論じている。社会学を定義する(社会学の固有の専門領域を定め、アウトラインを定めようとする)時、『個人(ミクロ)』『社会(マクロ)』で考えることが上手くいかないのはこれまで見てきた通り。それを、『意味付け』という切り口で考えるとここまでスッキリするとは。詳しいことはnoteにまとめた。2020/09/22
Shogo
1
社会学の歴史を批判及び検討することで社会学の定義、つまりアイデンティティの確立を目的とする。著者の解答は『共同性としての学』であるがまさしくその通りであろう。また、客観的に学問を考察することは窮地的には不可能であり、主観的にならざるを得ない。それに社会とはフィクション、つまり主観的意味世界である。他の方のレビューにもありましたが、少々強引な批判は多かったですが、社会学の魅力を知ることが出来る著作だと思います。2014/12/17