内容説明
1960年代初頭に、オークションとマッチングについての萌芽的研究がなされた。それから約半世紀、これら両理論は経済学における強力な分析ツールとして成長し、実際的な制度設計問題に対処する、ひとつの学問領域として分類されるまでになった。本書でマーケットデザインと呼ぶのがそれである。実用テーマの例には、国債オークションや周波数オークションなど、経済学と比較的馴染みのあるものから、腎臓ドナーマッチングや学校選択マッチングなど、これまで経済学と縁が無かったものまできわめて幅広い。本書はそうした応用を念頭に置きつつ、マーケットデザインの理論について入門的な解説を行う。解説に際しては、なぜそれを行うのかというモチベーションを重視するとともに、平易な例に基づく直観的な理解を優先する。
目次
第1部 オークション(単一財オークション;期待収入;複数財オークション;予算バランス―ダブルオークションと公平分担)
第2部 マッチング(財と財の交換;腎臓マッチングとペア交換;一対一マッチング;一対多マッチング;公立学校マッチング)
著者等紹介
坂井豊貴[サカイトヨタカ]
1975年生まれ。ロチェスター大学Ph.D.(経済学)。現在、横浜国立大学経済学部・国際社会科学研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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氷柱
4
1004作目。8月23日から。経済学の基本的なことをオークションという形式をとって細かく説いている作品。経済学のことを述べれば述べる程にその脆弱性を説明しているかのようで、いかに学問としての強度が弱いかが良くわかる。とは言え、わかっていないという事実を知るという意味ではどの学問にも共通なのかもしれない。探求は掘り下げれば掘り下げる程にその深さが深まるばかりである。2023/08/25
kusano
3
前半はオークション,後半はマッチングという構成.各章ごとに問題意識,目的などがハッキリしているため,関心を損なわずに読める.マッチングについては,日本語で読めるある程度専門的な文献としては非常に貴重.2013/02/22
Empirestar
1
先にちくま新書の導入を読むと吉。こちらはオークションとマッチングの学部生向けに書かれた入門書。オークションについては、メカニズムデザインの応用として説明されており、特に耐戦略性の定義など直観的にとらえやすい記述がよい。後半はマッチングの理論で、財と財の交換、1対1マッチングから複数人のマッチングなど、マッチング理論の最近の応用を丁寧に説明している。DAアルゴリズムの説明などが、具体例を使って説明されており、大変わかりやすい。オークションとマッチングという分野を知りたい人向けの良書。2014/03/25
うれいちゃん
0
サブゼミ課題図書。応用ミクロの一部門で、人に財を配分する制度を考える学問であるマーケットデザインの入門書。輪読図書だったので理解はかなりできたと思う。学部生向け入門書としては貴重な一冊2017/07/01
えゆ
0
オークションとマッチングについて、数式や数値例を用いて解説した本。著者が高校生でも読むことは可能と言っている通り、丁寧に読めば詰まることはあまり無いと思う。入門の範囲のみではあるが、わかりやすかった。関連した文献や論文が多く紹介されているのも良い2015/06/08