内容説明
今までに二度のベスト・セラーを生み出した作家の、創造の秘密をとらえた本。分かりやすい具体例に富む。彼の文学の先端で何が起こっているのか。現代文学にもたらしたものは何か。とりわけ、『ねじまき鳥クロニクル』と『海辺のカフカ』をめぐる部分は示唆的である。精神分析のかかえる起源との距離を、隠喩の構造に重ね、量子論に重ね、阪神大震災とサリン事件にまで射程を延ばす。
目次
序章 村上春樹は負けた!
第1章 “ふたたび”の物語論理(“再”の構造;帰還と反復;ジャンクとノモンハン;オイディプス王と“不気味”)
第2章 切断という物語論理(“切断”の物語群;阪神大震災と「半分のわたし」;ふたつの物語・世界・「僕」;ラカンと“切断”の論理)
第3章 歴史の出現と井戸マジック―『ねじまき鳥クロニクル』詳論(インタビューと水路転落;失われた声 獲得された声;声の正体とコミットメント;大江健三郎VS村上/春樹;多世界解釈とふたつの場所:『ねじまき鳥クロニクル』の論理;村上春樹と新憲法)
第4章 隠喩構造―『海辺のカフカ』を読む(隠喩の構造式;『海辺のカフカ』の世界;父親殺しの物語 物語の父親殺し;隠喩的 量子論的)
著者等紹介
芳川泰久[ヨシカワヤスヒサ]
1951年埼玉県生まれ。1981年早稲田大学大学院文学研究科後期博士課程修了。現在、早稲田大学大学院文学研究科教授、文芸評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Maiラピ
30
バイアスや偏見を持って作品を読んでしまうのを恐れて、村上さんの批評って今まで読まなかったけど(内田さんは批評じゃなくて春樹ファンだから除外)、序章村上春樹は負けた!って、え~誰に負けたの?ラカンと<切断>の論理、1984と1Q84、大江健三郎VS村上春樹、大江による村上批判・・・などなど目次だけで興味津々で読んじゃいました。誰に負けたかって?あのAですよぉ!!あの人。あぁ~やっぱりバイアスかかってしまいました。村上さんってほんとはめちゃ気にし過ぎなへなちょこな人なのかも。。。w2012/02/07