内容説明
1887年、横浜・ヴァンクーヴァー間の太平洋航路開設と相前後して、日本人のカナダへの渡航・移住の歴史は始まる。以来、数千人の人々が新天地を求めて渡加し、「日系カナダ移民」という生き方を選択した。その出身都道府県別人口比の一位は、滋賀県出身者が占めていた。二つの世界大戦を経験する動乱の世紀、異なる文化・社会環境をもつ若い国で、彼らはどのようにして生活の礎を築き、アイデンティティを確立していったのか。労働者として、義勇兵として、事業家として、敵性外国人捕虜として―それぞれの置かれた立場、時代局面のなかで、個々の強い意志と環境への適応力、「日系」の連帯をもって奮闘した人々。そこには滋賀県が生み出した「近江商人」のビジネス手法と精神性が看取される。本書は、一次資料の丹念な掘り起こしと緻密な分析を通して、太平洋の彼方で展開されていた知られざる社会経済史に光をあてる。
目次
第1章 第一次大戦期の日系カナダ人社会―義勇兵三栗谷保の半生を中心に(参政権問題と日系義勇兵編成の背景;三栗谷保の家書;第一次大戦期の日系社会と参政権問題)
第2章 絹布商事会社「シルコライナー」の創業と経営―滋賀県移民桑原佐太郎・北川源蔵の経営戦略(明治以後の滋賀県の移民輩出地;桑原佐太郎の家系;北川源蔵の家系;共同事業の開始;共同経営の変遷;経営状況;経営的成功の要因)
第3章 ヴァンクーヴァーの日系カナダ人社会―宮崎文書「加奈陀在留邦人調査表」(一九三八年)を中心に(カナダ在留邦人の調査資料について;ヴァンクーヴァーの日系人居住地域と営業種;元商店主・近藤義蔵の回想)
第4章 太平洋戦争時の日系二世の苦闘―リドレス運動の先駆としてのNMEG(家族集団疎開要求)(NMEGの活動;捕虜収容所への入所者;上杉文雄の所管;リドレス運動とNMEG)
第5章 戦後の再定住と金融機関の役割―ヴァンクーヴァー帰還後の再出発(晩香坡日系人信用貯蓄組合の創立;共同投資会社の推移;共同投資会社の活動)
著者等紹介
末永國紀[スエナガクニトシ]
1943年福岡県生まれ(原籍地佐賀県)。1973年同志社大学大学院経済学研究科博士課程修了。1973年~京都産業大学経済学部専任講師、助教授、教授。1988年~(財)近江商人郷土館館長。1990年~同志社大学経済学部教授(経済学博士)。1998年~2000年カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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