内容説明
現在、日本製造業の競争力の源泉として認識され、あるいは模索されていることの一つは、高付加価値製品を多品種少量生産するシステムである。かつて日本でそのような動向が存在したのであれば、その実体を明らかにし、歴史的な経験から何らかの含意を引き出すことは、喫緊の課題であると言えよう。本書は、群馬県桐生の絹織物と福井県羽二重を対象に、近代日本の絹織物業が経済発展の過程において直面した二つの問題、すなわち新市場との接触と新技術の導入という変化への対応として設計された制度と形成されていく産地をマクロ・ミクロの両視点から実証的に明らかにする。このプロセスのなかに、近代日本における産業発展の一つの型が見出される。
目次
序章 分析の視角
第1章 製品からみた明治期絹織物業の地理的分布の変化―定性的資料の再検討による府県別観察を中心に
第2章 福井県における輸出向絹織物業の勃興と成長―工業生産と「社」の機能
第3章 輸出向絹織物業における粗製濫造問題の実態―「領事報告」と羽二重産地の制度的・組織的対応
第4章 内地向織物業における明治期粗製濫造問題の実態―新技術の導入と学校・共進会・市場
第5章 織物産地の発展における工業学校の役割―染織関連学科卒業生の進路と特徴
第6章 桐生産地における生産組織の変化と技術選択―力織機化と工場化との関係再考
終章 結論と展望
著者等紹介
橋野知子[ハシノトモコ]
1968年栃木県生まれ。1998年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(経済学、2002年)。東京都立大学経済学部助手、駒澤大学経済学部専任講師を経て、神戸大学大学院経済学研究科助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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